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ワールドカップ(W杯)アジア最終予選を4試合戦った今の日本代表は、いわゆる横綱相撲を取れている気がします。
スピーディーないいサッカーをしていたサウジアラビアに、アウェーで勝ちきる強さ。ホームのオーストラリア戦では、豪州があれほど守備的になったという一事が日本の強さの表れ。
目を引く攻撃の素晴らしさ以上に、守備が安定していて、強い。強いチームは失点が少ないもので、今の日本は少々失点しても、取り返せるというメンタルで戦えているんだろう。
どうやったって勝ててしまうチーム、何をやっても勝てないチーム、両方を僕は経験してきた。苦境続きのチームは先制されると「ああ、今日も負けるのか」という心理に陥っていく。悲しき敗者のメンタリティー。
ブラジル代表と対峙したときは、カナリア色の威容だけで気押されるものがあった。もしも僕があのユニホームを着て容姿もジーコそっくりに変えたら、中身は僕でも、相手は僕が襲われたようなメンタル状態になるのかな、なんて考えもして。
これが常勝チームになると、スコアがどうであれ「最後は自分たちが勝っている」と見えではなく思える。ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)時代は、シナリオが多少ずれたとしても「どうということはない」と、良き結末のイメージを疑わないでいられた。これが勝者のメンタリティーだと思う。
技術が高いからメンタルも強くなるのか、メンタルが強いから力と技術を生かせるのか、考え方は様々だろうけれど。
長谷部誠さんが内田篤人さんとの対談で「欧州でプレーしていくなかで一番大事なことは?」と聞かれていた。ドイツで17年戦い抜いた長谷部さんが答えるに、「やっぱり根性ですね」。
今は運動生理学の知見が広まり、戦術の知識も余るほど手に入る。指導ひとつも、理論の裏付けなしには誰も納得させられない。心の動きさえも脳内の化学反応次第だと解明されうる現代に、根性なんて過去の遺物と見なされそうだ。
J1ヴィッセル神戸で大迫勇也選手が前線で体を張って、潰れ役になる。武藤嘉紀選手が自陣を駆けずり回り、守備に走る。優れた選手があれをやると、奇麗でないはずの作業も輝き出す。泥臭さが美しさへ転化する。
強いチームには戦略・戦術があり、技術もある。精神力はもっとある。サンフレッチェ広島もFC町田ゼルビアも、J1上位勢はみんなそう。
サウジアラビア戦、日本のゴール前で、4人がかりで捨て身のシュートブロックをする場面があった。美しいですよ。理屈ではなくて「ここは止める」の一心で、身を投げ出している。リバプールFCやスポルティングCPに所属する、きらびやかな名士たちがですよ。ハイレベルな勝負ほど、ああいった一瞬であの一歩を出せるか否かで明暗が分かれるんだ。
グリット(やり抜く力)やレジリエンス(困難をしなやかに乗り越え回復する力)など、形容のされ方は変われども、ハートの大事さは昔も今もさほど変わりません。理路整然と展開されるサッカーはなるほど美しい。ある種の「根性」もまた、同じくらい美しい。