BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2024年07月19日(金)掲載

“サッカー人として”
2024年07月19日(金)掲載

五輪サッカー、大人の事情は別にして

 5月半ばにポルトガルから帰ってきてみて、「あ、この夏は五輪があるんだったな」と思い出した。というのもあちらでは春先はチャンピオンズリーグ(CL)、その後は欧州選手権など、スポーツの話題はサッカーで持ちきり。普通にニュースに接する限り、五輪がなかなか意識に入ってこない。


 五輪の男子サッカーは原則23歳以下で争われ、24歳以上のオーバーエージ(OA)が3人まで認められる。これ、他の競技の人々からすれば「なぜ23歳以下限定?」と思うかもね。最上の選手が競う最高の舞台、が五輪のうたい文句のはずだから。23歳以下限定になったのは1992年バルセロナ大会からで、国際サッカー連盟(FIFA)と国際オリンピック委員会(IOC)、両者の思惑から生み落とされたものでね。


 1970年代からプロ選手の出場が認められ始めたとはいえ、長らくサッカー界で五輪はアマチュアが出場するもの、一国のトップチームが参ずる大会ではなかった。当時から代表に関わってきた僕らの認識はそうで、目指す世界最高の舞台はFIFAによるワールドカップ(W杯)。


 IOCは五輪サッカーをトップ選手の集う大会に格上げしたがったけれど、FIFAはよしとしなかった。分からないでもない。世界最高の大会が2つになるのも妙だし、4年に1度のW杯が2年ごとに開催されるようなもので、予選の実施など年間カレンダーがどうにもならなくなる。


 ひと悶着(もんちゃく)の末、23歳以下ルールができた。しかしそれで行ったバルセロナ大会男子サッカーの観客動員は散々だった。そこでスター選手も参加できるようにOA枠ができ、今に至る。


 世界ではサッカー選手は18、19歳あたりでプロになる。僕も19歳になる手前でサントスとプロ契約した。なのでFIFAは20歳で若手とそれ以上を線引きするように、20歳以下のW杯を確立している。23歳といえば選手によってはプロ5年目ほど、すでにそれなりのクラブやフル代表で一人前にカウントされている。「アンダー」と年齢別にする必然性が乏しい年齢なわけで、特殊な23歳以下チームに欧州各国は重きを置かない。


 もともと五輪は、競技はお金を得るためのものではないという理念から出発している。しかし今では、アスリートの現実は純朴なアマチュアリズムの理想からは外れている。競技にビジネスの要素が「ない」ととらえるのは無理がある。


 IOCが変則を設けてまでサッカーを五輪に組み込みたいのは人気と商業的価値ゆえだろうし、FIFAもFIFAで五輪サッカーと手を切るわけでもないのは、何らかのうまみがあるからではと邪推したくもなる。


 入り組んだ複雑な大人の事情のようで、事は単純なのかもね。注目を集めたい、もうけたい。欲や権益から自由になるのは、組織もスポーツも難しいのかもしれない。


 でもいきさつがどうであれ、選手たちがその犠牲になっちゃいけない。ピッチに立つ僕らにとっては、W杯であれ五輪であれ練習試合であれ、全ての試合がステップアップにつながる決勝戦でもあるのだから。プロフェッショナルとして自分の価値を高める、パリ五輪メンバーのみんなもその一心で全てを注いでほしい。