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11月18日の練習試合、オリベイレンセで初めて先発できた。開始早々に絶好のチャンスに持ち込みつつも、枠内シュートはGKに阻まれた。決まるかどうかでこの先が変わるだけに、残念。その日は15分ほどで、いきなり右MFへ回された。「世界で一番足の遅い右MF」だったかもね。それでもボールを巡らす起点として、思いのほかうまくこなせた。
最近はセンターフォワード、いわゆる「9番」からは少し下がりめの1.5列目などを任され、感触はいい。一番前で構えるよりは自由に動けるし、ボールにも多く触れる。ただしそうなると、点を取れるポイントにどう入っていくかが考えどころだ。位置取りがほんの5メートル下がっても、得点のしやすさは低くなる。
僕はもともとドリブルが好きで、サントスでウイングとして認められたし、ボールに触れる方がサッカーをしている実感を持てる。思うに、根っからの「9番」ではないんだろうね。これぞ「9番」という猛者は、得点以外でのミスなど気に留めず、一発ドンで取れば万事良しとする。2000年代のACミラン(イタリア)のF・インザギなんて、最新の判定技術なら得点の半分は取り消されたかもというほど、オフサイドかゴールかのギリギリで勝負していた。僕はそこまで、ゴールがすべてとは割り切れなくて。
ブラジル代表ロマーリオは信じがたい身のこなしで、それでいてサラリと優雅だった。この「9番」、1994年ワールドカップ(W杯)で優勝した後、なかなか所属のバルセロナへ戻ってこない。監督のクライフは怒って謝罪を求めた。全員が待つ場へやってきたロマーリオは言い放ったらしい。
「何だこれは。合流が遅れたことに対してか? ではお前、W杯で1次リーグ敗退だよな。それで言う権利はない。お前はW杯に出ていないよな。問題外だ。優勝してMVPになった俺に言うことでもあるのか」。クライフが手をたたいてその場はお開きになったという。同意してなのか、「もういいだろ」とあきれてなのか、判別しがたいけれども。
ブラジル代表監督としてW杯を優勝したスコラリがチェルシー(イングランド)を率いたころ、チームにはドログバとアネルカという強烈な2大エースがいた。ドログバに「少しでいいから相手ボランチをけん制し、守備もしてくれ」と頼んだら「俺はやらない」という。仕方なくアネルカに話を向けたら「俺もやらない」と即答。「これでどうやって勝てというんだ?」というスコラリの愚痴も、ごもっとも。
監督としてはゴールをもたらせる存在がぜひとも欲しいし、得点に集中もさせたい。とはいえ全盛期のメッシのレベルでないとそうもいかないのかもね。すごいドリブルでゴールを決めまくるか、歩いているか。ときにそんな風情のメッシは、一説には走行距離がGKより少ない日もあるとか。
エースは、扱う側も器量を試される。感化されながらも、僕はロマーリオにはなりきれませんでした。