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「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と語ったのはプロ野球の故・野村克也監督だけど、サッカーでも、自分の力の及ばぬ何かが働いたと思うときはある。
シュートがボール1個分ずれて、昇格につながるゴールが幻になる。際どい判定で下されたPKで残留の道が断たれる。不運はなんとも不公平なものだと憤りたくなるのは人の常。
ワールドカップ(W杯)を優勝したブラジル代表FWベベトは「得点を取れなかったら、そのスパイクははかない」と言っていた。必ず右足からピッチに入る、勝った日の服を着続ける。ジンクスを気に掛ける選手は海外でも多くて、僕にも昔は「勝利のルーティン」があった気がする。
でも本当は、勝とうが負けようが変わらぬルーティンを持っている人が強いんだよね。決まり決まったように努力をし続けられる人たちが、運も乗り越えていくんだろう。
不遇や苦境にとらわれたとき、だいぶ前には幸運に救われた日もあったことを僕らは忘れがちになる。運は確かに存在するけど、長い目でみれば「ご破算」といえるんじゃないかな。
8月末からリーグ戦で勝ちがなく、練習試合を含めた直近4試合で計16失点もしていた我がオリベイレンセが、無敗でポルトガル2部の首位を走るチームにアウェーで1-0で勝った。でもこれは不思議というわけでなく、いい戦いが出来そうな予感が事前にあったんだ。
最近になってチームが時間に対してきっちりするようになった。練習が予定時刻に始まらないのもざらだったところが、遅れたら罰金やメンバーから外されるようになり、一人ひとりが人任せでなく正面から規律と向き合うようになった。
だから勝てた、という単純な話じゃない。でも、それがない限り勝利もない。おのずと練習も緊張感があり、紅白戦は控え組の士気がいつになく高かった。これが当たり前になれば、うまくいかないことを「不思議」で片付けなくなるはず。
紅白戦では僕も2ゴール、調子はいい。ただ、起用のされ方は変わらない。しおらしくしているたちじゃないので、憤りは別の場所でぶつけています。試合翌日がオフなら、勝てば祝勝会、負けたら負けたで残念会。やっている中身はほぼ同じ。これも、30年以上続いてきた一つのルーティン。
「帰りたい、じゃない。お前は『帰れない』んだ。覚悟を決めたのなら帰ってくるな」。15歳でブラジルに飛び込む自分に贈られた言葉を、いま一度自分に投げかけ、性根を据え直しています。