BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2023年10月13日(金)掲載

“サッカー人として”
2023年10月13日(金)掲載

「普通」の基準はひとくくりにできない

 オフ日にマドリードまで足を延ばし、アトレチコ・マドリードとレアル・ソシエダードの対戦をみてきた。久保建英選手に話を聞くこともできた。日本人で初めての、スペインリーグ月間最優秀選手。彼や、彼に続く選手の「これくらい普通」は、こうやってどんどん上がっていくんだろう。


 僕によく助言を求めてくるオリベイレンセのボランチも一緒に観戦したのだけれど、目の前の試合は格好のお手本だった。「ほら、両チームとも無駄にドリブルをしないだろ。ボランチは少ないタッチで、プレッシャーを浴びる前にシンプルにさばいていく。考えるスピードが速いだろ?」


 ポルトガル2部は攻撃的だ、といわれる。確かにオリベイレンセは攻撃ありきで、ここから崩しだというタイミングでもしばしばシュートが打ち放たれる。


 でもマドリードで見た両チームのレベルになると、単に「打つ」「攻める」のとは様相が変わってくる。回すときは回す、攻めるときは攻める。タイトでスペースがないから、ボールと相手を動かしてスペースをつくり出し、できたところでドリブルの出番になる。僕らのリーグでドリブルの場面が多く、ドリブラーがはえるのは、プレッシャーが緩くて余裕があるからだという気がしてくる。


 周りの味方を使うより、とにかく自分でやりたがる海外の選手はいるけれど、アトレチコのグリーズマン(フランス)なんて全然そうじゃない。簡単にすべき時は簡単にプレーし、状況が良いならボールを持つ。そこが二流と一流の差かもしれない。ボール扱いの技術なら、みんなさほど変わらない。そのスキルをどこでどう使うか、いつ出さないか。いわゆるインテリジェンスが、一流は高い。


 なんでグリーズマンはあれほどフリーでボールをもらえるのかと、感心してしまう。簡単そうで簡単じゃないよ。相手と味方、ボールを持つ味方とそうでない味方も見て、ボールが来る前に自分の立つべき位置を定める。その判断が速いんだ。


 スペイン2部ウエスカでプレーする橋本拳人選手もその場に来てくれた。聞けばチームは守備ありき。テンポが一辺倒のときに落ち着かせようと、日本でよしとされるプレーをしたら「いらない」と却下されたらしい。何が普通で、いいか悪いか、基準は場所と人によりけり。十把ひとからげに「スペインではこう」とはできません。


 オリベイレンセはどうも時間や予定に寛容で、僕は知人に会うたび、これがスタンダードなのかと確認してしまう。「いや、ウエスカの前監督はバスク地方の人で、あちらは生真面目な人が多いみたいです。時間もそうだし、練習着のシャツをちゃんとパンツにたくし込めと怒られました」と橋本選手。


 よかった。僕の基準がおかしいわけでなく、いる場所には似た感覚の人がいるんだと、ほっとしました。