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三笘薫選手や久保建英選手らの欧州でのめざましい活躍や、代表の充実ぶりを見るにつけ、日本選手の意識の持ちようが本格的に変わってきたなと感じます。
30年前の日本で僕は異質だった。自分たちはワールドカップ(W杯)に出ていないし、韓国やアラブ勢にそう簡単には勝てない――。みんながそう尻込みしても、僕は本心から「海外の選手より、俺の方がうまいから」と思っていた。
ブラジルに出て、W杯に出場する選手とも真っ向勝負し、「あれだけやれているのだから個人でも負けるわけがない」と自信をみなぎらせてピッチに立った。そんなメンタルの持ち主が昔は僕一人だったのが、今や日本代表全員がそうなっている。自分を低く見ず、戦う前に心理的に優位に立てる。この変化は大きいよ。
まだまだ日本の選手が低くみられがちなときはある。リバプールに加入した遠藤航選手が先発した試合、ボールを持ち出そうとした局面で奪われ、ピンチになりかけた。すると辛口らしきコメンテーターがその1プレーを何度も取り上げて「リバプールに値しない」と難癖をつける。良いプレーも数多くあったのに。
ブラジル人MFが30歳で移籍しても「30歳なのに」とは言われないのに、遠藤選手だと年齢がやり玉に挙がる。ドイツでボール奪取がトップクラスだった事実も見落とされる。欧州では自国が一番であって、みんながみんな、他国のサッカー事情に詳しいわけでもない。知っていることが狭く、浅いことで偏見めいた見方が出てくるのかな。
遠藤選手はその手の批判にも「それでリスクを怖がって挑戦しなくなるのでは成長もない」と毅然としたものだった。雑音をはね返してほしいね。
僕なんかはブラジル時代、10点満点のプレー採点で2点とこき下ろされた。2人だけが2点。僕と、もう一人は監督だ。寸評いわく「日本人を起用したのはお前だから」。説得力を欠く蔑視ではと反論したくもなるよ。
「カズーにはサントスの11番は重かった」「荷物をまとめて日本に帰るべきだ」。そんな言われようにも負けなくなったし、厳しいぶん、覆して得られた自信も喜びも格別だった。同じようなメンタリティーで戦う日本人が、着実に増えているんだね。