©Hattrick
ポルトガルで、それもオリベイレンセでゴールを取りたい。もっと出場時間が増える選択肢もあるだろうけれど、オリベイレンセで得点、それをやり遂げたい。
熱心に声をかけてくれたオリベイレンセと鈴鹿(日本フットボールリーグ)が示してくれた条件はほぼ同じ。双方と複数回、じっくり話し合ったうえで考えた。僕にはやはり、この半年でまだやり残した挑戦がある。
5月末に帰ってくる前に監督やGMともやり取りをした。「選手として使う気があるのか。使えない、とみているのか。はっきり言ってほしい」「使えると思っている」「大差の付いた追加タイムに数分出場させて、『使っている』はナシですよ」。試合に継続的に関わり、状態を上げていきたいという自分の考えも伝えてある。お互いの意思を疎通できる関係性が既にできていることは大きかった。
僕だけでなく、何人もの日本選手が欧州へ挑戦すべく、旅立っていく。僕らはあえて、成功の保証されない世界へ飛び込んでいく。振り返ってみればキャリアの分かれ道のたびに、いかにも困難で大変そうな方を選んできた気がする。
難しめの状況に身を置き、多少背伸びしてでも、今の自分がどのくらいできるのかを自分自身が知りたい。僕らはそんな種族なんだと思う。僕もこの年齢でもう一度、より多くピッチに立ち、オリベイレンセのサポーターをゴールで喜ばせてみたい。
冒険を求めてしまうんでしょうね。危険な香りのする、悪い女性の方になぜかひかれてしまうように。僕は専門家ではないので詳しくないですけれども。
再び、僕は試されることになる。今度は倍以上の長丁場、倍以上の覚悟が必要だけど、焦ってもいけない。抑えるところは抑え、出し切るときに出し切る。前回の経験を生かし、挑戦のロードマップはなんとなく頭の中に描けている。
この間、練習参加した鈴鹿では多くの方々が温かく出迎えてくれた。歓迎され、惜別され、どんな形であれ求められること。プロとしてこんなありがたいこともない。
オリベイレンセを離れる前日、なじみのカフェの女性店員さんがぽつりと言った。「あなたは私たちを置いて、いってしまうのね」。こうなったらオリベイレンセの寅さんとなって、「おう、帰ってきたぞ」と応えるしかないよ。