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5日後にはまったく違う国でプレーしていたり、数年前はJ3にいた選手がJ1へ一気に昇進したり、想像もつかない力学で選手が流動していくのはサッカー界ならではかもしれないね。
数カ月ぶりにオリベイレンセへ戻ってきたら、同僚だったブラジル人が東南アジアのクラブへ旅立っていた。「いいFWなのに、なぜ東南アジア?」と最初は思ったけれど、チームの施設の様子や条件などを聞くと、その選択にも納得がいく。「Jリーグはアジアで最上」と思いがちな僕らが知らないだけで、プレーする意義のある移籍先はまだまだ世界にたくさんある。
ものすごい待遇で選手が次々とサウジアラビアへ渡っている。一つ言いたいのは、サウジはポッと行って簡単に成功できるリーグじゃないこと。その土地で成功し、何かを残そうと向き合わない限り、外国人の立場の選手はそうそううまくいくものじゃない。
アマチュアの日本リーグの時代、「日本でプレーするなんて簡単だ」と来日したブラジル人選手ほど、成功をつかめていなかった。新天地でやるのは大変だと心がけていた選手が、その移籍を実らせていく。
200億円を提示されたからって、「お金をもらいにいくだけ」では成功しない。その意味でいうと簡単な移籍はない。ロナルドがどこへ行っても成功できるのは、まずお金ありきではなく、サッカーで成功するとの強烈な野心が根本にあるからじゃないかな。浮つかない謙虚さ、その野心にお金がついてくるというか。
1円玉を落として拾わない人間は税金もごまかす、なんて俗説も聞くけど、数千億円所持している人たちほど1円をおろそかにしないはず。世界の資産家にとって1億円は僕らの千円くらいの感覚かもしれない。かといって「千円で懐は痛まないでしょう。ください」と頼んでも、くれるわけがない。彼らはお金があるから拠出するのではなく、そのお金で得るものがあり、さらに増やせると見込んでいるから出す。
はした金でも、あぶく銭でもなく、明確な意思を伴ってサッカービジネスのマネーは動く。そうしたビジネスと選手の野心が一致するなら、おそらくその移籍は「正解」で、活躍の地平も広がっていくんだと思う。
歴代の世界最優秀選手賞受賞者たちは悔しがっているんじゃないだろうか。20年後だったら、自分にも年俸500億円のオファーが届いたのに、と。Jリーグ開幕時の僕にも、世が世なら百億円単位の巨額オファーが舞い込んだのかもね。
今でもひそかに、そんな話がこないかと期待している自分もいます。プロだもの、額に見合う何かを生み出せる対象でありたいし、それに応える気概も誇りも持ち合わせていたい。