BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2023年06月23日(金)掲載

“サッカー人として”
2023年06月23日(金)掲載

マンネリよりも「こなす」が危うい

 サッカーでは冒険的で挑戦的なやつだとみられがちな僕ですが、私生活にかけては、割と保守的じゃないかなという自覚がある。


 足を運ぶお店はいつも同じ。いろいろ調べて開拓して、ということに疎い。店でメニューがごまんと並んでいるのに、何十年で数種類しか注文していない。はやりの歌に手を付けてはみても、曲の好みは変わらず、カラオケの締めは決まって「夜明けのブルース」。「よく飽きないわね」と家族にあきれられる。


 自主練習だって「20年間ほぼ同じことをしているね」とはたからつっこまれそうだ。マンネリにどっぷりつかって生きている。楽しんじゃっている。


 ただし練習の目的は変わっていなくても、マイナーチェンジは施していく。動画サイトで「これは」というものはやってみるし、昔のやり方にあえて戻すなどアプローチを変えてみる。


 毎日継続してやっていることこそ、流れ作業に陥りがちだ。体幹トレーニングであれば、体幹のどの部位を意識し、負荷を感じながらやれるかが生命線。それが「早く終わらせたい」などと気が緩みだすと、なんとなくこなすことで終えてしまう。この「こなす」になれるのが一番良くない。


 相手を置かないパス&コントロールの練習なんて、ひたすら同じことの繰り返し。これも、相手がいると想定してボールを止め、蹴るのと、漫然とこなすのとでは、同じ反復でも成果に大きな違いが出る。


 欧州の強豪クラブだからといってすごく特別な練習をしているわけでもあるまいし、Jリーグクラブも日本代表も、外形的な練習手法に大差はないだろう。でも上のレベルの選手ほど、マンネリ的な作業をマンネリで終わらせない意識を持ち合わせている。


 6月の代表戦2試合では、自分が勝負を決めるという強い自覚が選手一人ひとりに見受けられた。惰性とは対極にある意識を選手が持てている限り、森保一監督が2期目でもマンネリ化せず、グループとしての競争力を保てるんじゃないかな。


 「人気ユーチューバーやカズは、自分が努力しているとさえ思っていないのでは。そうすることが当たり前過ぎて」といった論評を読んだ。そうかもしれない。人一倍努力しているなんて考えてもいないし、自分は普通。僕より努力家の人がたくさんいる。


 人生が単調な繰り返しにすぎないとしても、そういうもんだと思っている。そこに意味を見いだせると思っている。明けても暮れても一つのことに打ち込めるのは強さでもあり、「それはマンネリかも」というのなら、マンネリは最高の娯楽です。