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79分までプレーしたFC枚方戦を動画で見たという某トレーナーが、連絡してきた。「楽しそうでしたね。見る側にも伝わってきました」
最近はサッカーに興味を持たない若者も多く、「コスパが悪い」と受け止める人もいるという。90分見続けても得点でワーッと沸く場面はわずか、時間を要する割には楽しみの効率は悪いということなのかな。ハイライトで十分、という意見もあるのかもしれない。
サッカーでオンプレーの時間は60分弱といわれる。そこで1人のFWがボールを触る時間は、トータルで2分あるかないか。神童マラドーナでさえ長くて5分ほどじゃないかな。ドリブルしたって10秒に達しないし、いいワンタッチパスを30回やっても、たかだか30秒。
それ以外の時間はボールのないところで味方のカバーへ走ったり、パスを呼び込む動き出しを繰り返していたりする。割に合わないと言われればそうで、理不尽なスポーツでもある。「FWって、何をやっているのかよく分からないまま試合が終わるね」と思われるのも分からないではない。
それでも僕らはほんの1秒であっても、チームプレーの流れに参加する瞬間が楽しい。枚方戦で僕が自陣でヘディングで橋渡ししたワンプレーが、決勝ゴールへとつながった一コマがそう。11人でボールを前進させていくビルドアップにうまく関われた瞬間もそう。
僕がここに立ったから、パスがどこそこへ通らず、相手がボールを下げざるを得なくなる。見落とされそうな細部が連なってサッカーの試合は動いていく。その機微は伝わりにくいものだし、観戦が文化となっているヨーロッパの人々ですら、すべてを理解して楽しんでいるかは分からない。
それでも、無用に見えるプレー群が、大半は失敗に終わりながらも、コツコツと積み上がった先に訪れる熱狂を見る人は楽しみにしているんじゃないかな。なかなか報われない苦労も、唐突にご褒美が降ってくる幸運も、過程ごとひっくるめて決定的なプレーやゴール、勝利に喜び、酔う。そこには万国共通のものがあるから、これだけ世界中で支持されるんだと思う。
パッと見ただけでは分からない。データでも拾いきれず、効率の物差しだけでは浮かび上がらない。でも確実にチームを助けている。それこそは文字通りの献身性じゃないのかな。ピッチの外、皆さんのそばでもそんなプレーや「選手」が思い当たりはしませんか?