BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2021年12月17日(金)掲載

“サッカー人として”
2021年12月17日(金)掲載

挑戦することの楽しみ

 必要とされるなら、どこにだって僕は行く。これはなにも、今になって言い始めたことでなく、ずっとこのスタンスで生きてきた。そしてこの冬、移籍の選択をすべきは今じゃないかという自分の直感がある。


 この2年、試合にまともに出ていない。もちろん横浜FCは僕を必要としてくれている。ただし「必要」にもそのされ方、具合があり、自分がどうみられたかは僕自身が分かっている。


 少なからぬクラブが僕に興味を示してくれた。この場を借りて感謝したい。こうして新たな挑戦へキャンプで汗が流せる、この幸せ。たとえ全試合フル出場はできなくとも、貢献できることがある。僕を役立ててもらいたい。そして1分、1秒でも長く出場したい。心の声に忠実でありたい。


 名門サントスで出場機会をつかめず、転変の旅へ踏み出した。19歳のときだ。環境はまるで変わった。練習設備は何分の一にもつましくなり、飛行機での優雅な移動は24時間のバスの長旅に。田舎の小クラブでは掘っ立て小屋風の寮で暮らし、酷暑の北方のクラブにロッカーはあれどもシャワーがない。水だけ噴き出る水道管もどきがあるだけ。


 それより何より、ピッチで戦えることがうれしかった。何にも勝るあの喜びが今でも体に脈打っている。


 そこが原風景だから、環境の条件やハンディに対して僕は鈍いのかもね。30年以上もプロをしている自分なりのやり過ごし方を覚える。ないならつくれ、マッサージ室がないなら屋外でやろうかな。ワンボックスカーの後方をアイシングルームにしてもいい。施設・設備が乏しいなら、マンションの一室を借りて「クラブハウス」に仕立てちゃおうか。


 移った先に栄養満点の定食屋が見つかるかも。美人のお姉さんがお相手してくれると楽しいな。旅立ちや別れは、出会いと発見も連れてくる。苦労の先にある楽しみも味わいながら、ここまでやってきた。いる場所がどこであれ、全力でやっていれば、いつもなにがしかが僕の手に残った。成果といったたいそうな代物ではなかったとしても。


 サッカーを続けたいのなら、ハードな練習で365日苦しむ道を選ばなきゃだめだ。失敗する怖さで逃げたくはない。立ちすくむよりも1センチでも積み重ね、自分をゴールへ向かわせたい。生きている実感をありありと感じていたい。


 そして1年トータルで計れる成果というものを、2022年に残してみたい。