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いままでの監督像というものから、日本ハムの新庄剛志監督は明らかに外れている。まず見た目からして違う。練習風景は野球の超一流選手が遊びに来て教えているみたいで、どうも監督っぽくない。「監督たるものかくあるべし」といった固定観念が崩れていきそうで、楽しくなってくる。
あの就任会見にしても僕はカッコよかったと思う。自分に似合うものを心得ている人の着こなしで、個性が出ている。だからすごくサマになる。「つかみ」で人を引き込めるから、発言も聞く人の耳にスッと入るんじゃないかな。それも一つの資質。指示をする人への拒否反応が最初にくると、言っている中身は正しくても、説得力は半減してしまうものだから。
上に立つ人というのはとかくお堅いイメージになりがちだけど、「監督だからあらゆる面でお手本に」という通念も薄れていくのかもしれないね。
プロとはなんぞや。もちろん勝負事だから勝たねばならない。一方で「人を楽しませているか」がプロの条件としてあり、ひょっとしたら新庄さんの場合、そちらばかりが頭にあるのかも。日本ハムに選手で加わった当時、優勝するとは一言も言わなかったと聞く。その代わりに「札幌ドームを満員にしたい」と。僕がブラジルから帰ってきたときに「国立競技場を満員にしたい」と所信表明した思いと似ているかもしれない。
ピッチ入場を待ち構えるカメラマン。つんざくヤジ。人だらけの会場、声援。その熱でこちらも燃える。J1で楽しめたはずのそれらを僕ら横浜FCはこの2年間、味わい損ねているよ。パンデミック(感染症の大流行)で学ばされたのは、プロの日々はお客さんが入らないと味気ないということ。
だから自分なりに少しでも、みんなの印象に残る言葉、行動に考えを巡らす。発言がマスコミに喜ばれれば読む人ができ、読む人のいくらかは会場にいってみようとなる。場が生まれ、心を動かすゲームの序幕となり、そこまできて楽しみというものは完成する。
おそらく新庄さんも、自分が登場した放送の視聴率や、何人が目にしたのかの数字まで常に気にかけているはず。楽しませる仕組みを分かったうえで、やっている。日本人っぽくない? いやいや、大リーグにもああいう監督はいないでしょう。比べる対象のいない人。そこがいいんだ。唯一、という存在感がね。