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あのときに1勝を、あの試合で勝ち点を1でも拾っていれば。残留争いの渦中にいると、わずか1ポイントの重みが身にしみる。直近の試合の良しあしで僕らは最下位に陥っているのではなく、1年間を通じた結果で今の苦境にいる。
残り4試合を全勝すれば――。その通りだけど、そう強くはいえない。2017年の川崎フロンターレのように勝ち点8差から終盤で逆転優勝したチームなら、自分たちにその力があると信じられる。横浜FCは今年、3連勝できていない。必ず、と息巻いても口先だけになる。
でももちろん誰一人諦めてはいない。ときに瀬戸際の戦いは人の及ばぬ力で決まる。奇跡の残留、非情の降格。どうしてか説明はつかないけれども勝ててしまう監督もいて、「星の下」にいるかも勝負事の要素だとブラジルではいわれる。
いい選手や監督なのに、勝ち運に恵まれないと「ペ・フリオ」と呼ばれる。直訳すれば「足が冷たい」。逆にペ・ケンチ(足が温かい)は日本でいう「持っている人」だ。あいつはペ・ケンチだからチームに加えたいと編成担当が関心を寄せたり、監督が若手GKを「ペ・ケンチだ」と感じて理屈抜きで抜てきしたり。
でもやはり、実力と努力なしでは「星」にたどり着かないのも確かでね。運について語れば決まってオチが付く。「家で寝ているだけのやつにはそういうものは訪れない」
低迷するクラブほど、哲学を一貫するのは難しい。現実の厳しさが生ぬるい継続を許さない。選手は出入りが激しく、強化担当も監督も社長も代わる。人が代われば、何が正しいかの考え方も変わる。そんな入れ替わりのなかでも信念を持ち続けられるクラブは強い。
多くのクラブが降格などの暗い時代も経験して大きくなった。苦い1年の記憶も積み重ねとして受け継がれ、その蓄積に確信を持てたとき、僕らのクラブも変わっていけるのだと思う。
起きたときには奇跡だと感じられても、時間がたつと「奇跡じゃなかった」と腑に落ちる出来事がある。おそらく悲劇でも同じ。ラッキーにも自分へボールが転がってきた日々もあれば、どうにも最近の僕は足が冷たい。だけど続けてやっていれば、温まることもあるさと信じてやっています。今の横浜FCにはペ・ケンチもいるから、見守ってください。