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自分の人生を変えたサッカーがあるとすれば、それは黄金のカルテットで知られるワールドカップ(W杯)1982年大会のブラジル代表だったように思う。
当時15歳の僕には、ディフェンダーはディフェンスをする人という固定観念があったのだけど、あのセレソンのレアンドロはSBであってSBをしていない。GKペレスと2人のCB以外は、みんなFWかのように振る舞う。予想もつかないところから始まるパス、ドリブル、攻撃。ポジションの概念が分からなくなるくらいに面白かった。
そのブラジルは行ってみると広大で、寒い南部はヨーロッパ系の人が多く、サッカーもフィジカル寄りになる。年中暑い北部では走ってばかりはいられないから、ショートパスや個人技を生かすスタイルを好む。総じていえるのは攻撃を愛していること。相手がどんな強豪でも、守ってばかりでは褒めてもらえない。
これがイタリアだとまったく変わってくる。ジェノアでは、強豪との一戦はホームであっても「11人で守る」と指示された。相手CKで、FWの僕も含めて全員帰陣する。これはこれで生き残るための知恵なんだ。
「Jリーグは(攻守の)切り替えが早い」。ブラジルから来たばかりの選手は感想を述べるという。ブラジルはもう少し「ゆっくり」だとも。一方、Jリーグは「ワンテンポだ」との印象も聞く。スピードを上げたら上がったきり、リズムの変わらぬ曲のように。
ブラジルのサッカーって、いざ中に入ってみるとボールの展開がすごく速いんだよ。慌ててはいないだけで、スローダウンしておきながら急激にスピードアップする。いまの川崎フロンターレにはこれに通じる緩急の妙があるね。
ブラジル時代、かけ算の九九ができない仲間がいた。ところが彼はピッチに立てばサッカーIQがとても高く、賢く相手の裏をかく。そんな外国人目線だと、日本のサッカーは「やたら走る」とも映るらしい。大事なのは「いつ走るかだ」と説いたのはオランダの名手・クライフ。いつ止まるか、とも言い換えられる。
いつ黙るか。異性を口説くときにはそれが重要だ、と僕は教わりました。やたらと語ってさらしすぎるのは愚策、興味を引く秘密も残しておく。そんな駆け引きの妙、一度お試し下さい。僕は実践しています。