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日韓で代表定期戦が行われていた時代、日本は「アジアの虎」韓国に歯が立たなかった。勝てそうな気配をつかめたのはダイナスティカップの1992年ころからだ。決勝で2-2からPK戦の末に韓国を退け、こちらは大喜び、あちらは大ショック。そのくらい、実力ではまだ韓国が上だった。
戦う前から日本の選手が気後れする。当時のそんな韓国コンプレックスから、ラモス瑠偉さんや僕は自由でいられたのがよかったのだろう。「ブラジルでやってきたんだから。負けないよ」と思い込んでいてね。ワールドカップ(W杯)予選で韓国に勝てたのが「ドーハの悲劇」の1993年の日韓戦。思い返せば、記憶にある韓国のFWはみんな、速く、うまく、強かった。
国に歴史があるように、サッカー界にもサッカー界ならではの韓国との歴史があると思う。紡がれたのはライバル意識だけじゃない。今では数多くの韓国人選手がJリーグで活躍し、ブラジル人選手と同じく日本のレベルアップに貢献してくれている。「敵」とみなすのはそぐわない。大きなライバルであるとともに「友」でもあるのが実態だ。
「カズさーん。この栄養剤、飲んだらまだまだ走れますよ。60歳まで」。Jリーグで一緒にプレーした韓国の選手は実にフレンドリーに気を使ってくれる。あいにくチームの決まりで飲めないんだけどね。別の韓国人Jリーガーは韓国コスメを分けてくれる。おかげでうちの妻は化粧品に困りません。若い世代にも同じ釜の飯を食った韓国のサッカー仲間がたくさんいて、韓国へ赴くと総出で歓待してくれる。「何から何まで案内しますよ」と、もうサイコー。
孫興民選手(トットナム)がイングランドで高く評価されていることは、同じ東アジアの人間としてうれしく、僕らの希望でもある。同じアジア人として応援したくなる。
戦いになれば、韓国に負けてほしくないともちろん思う。韓国の人々も日本に対して同じ思いを抱く。でもピッチを離れれば、互いを尊重し、手を取り合えるのも選手なんだ。政治や歴史上のもめ事が、本当にあるのかと思うくらいに。
僕はクロアチアでプレーしたから、政治や歴史がサッカーに色濃く影響することはよく分かる。でも、そうしたものを超えて強い友情が結ばれてきたのもまた史実だと、知っている。どこの国のどんな出自の人であろうと、サッカーがうまい人は、うまい。いいやつは、いいやつ。日韓の間でも、それは変わらないよ。