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海外へ渡った身として、選手の移籍について思うのは、あちらではサッカーはスポーツでありつつも厳然たるビジネスなんだよね。
日本ではまだまだスポーツといえば金銭とは関係ないドラマ、「高校球児による正々堂々たる戦い」といったイメージが先行するかもしれない。でも、世界はきれいごとだけでは渡っていけない。腹を探り合い、弁護士を担ぎ出す大ごとにもなる。
僕がクロアチア・ザグレブから移籍先を探していたとき、なかなか話がまとまらなかった。なぜだろうと代理人に聞くと「ザグレブが約30万ドルの移籍金を要求しているんだ」。移籍金ゼロで手にしたはずの僕に、僕の知らないところで、しれっと設定してくる。さほどに商魂たくましい。
所属するFWが20得点取ったとします。日本なら「あと4年頑張ってくれるとして、元を取るには……」と減価償却的に契約を模索しそうだ。海外は違う。どう値段をつけ、ひともうけするかを考える。選手につくこの値段が上がるほど大事にされ、逆だと、すぐ結果を求められる立場になる。そこは露骨にシビアだと欧州組の選手も言っていた。移籍のしやすい単年契約を求めた選手が、途端に干される。出場どころか練習もろくにさせてもらえないんだって。
Jリーグの選手が移籍金ゼロで欧州へ引き抜かれるということは、「0円なら取ってもいいよ」というわけで、Jクラブの評価も値段のつかない0円ということにもなるよね。「世界における日本の評価はまだその程度なのでは」という某選手の見方にもうなずける。ブラジルなら、数年後に数十億円へ化けうる商品を0円で手放すなんてあり得ない。
ひとりの選手に、値段がつけられる。そう認められて、初めて選手が自ら「これだけの待遇がほしい」と言えるようになる。2部や3部では「練習の環境をよくしてほしい」といった声をよく聞く。でもね、自分が上にいかない限り、環境なんて良くならないんだ。
居心地がいい、3年契約だからなど悠長なことは言わず、「3年以内に1つ階段を上るぞ」くらいの志がないと現役生活も長く続かなくなるよ。環境を改善してもらうことを夢見るより、自分でその環境へいく。生き残りたいなら、今いる場所を離れてでも、上がれるだけ上がらないとね。