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僕の年代でいえば、テニスで日本人が世界ランクのトップ10に入るなんて至難の業というのが一般理解だった。大坂なおみ選手はテニスに詳しくない僕らでも知っているセリーナ・ウィリアムズを下して四大大会を優勝したわけで、ナブラチロワらに競り勝つのと同レベルのようなものと考えると、すごいことだよね。
日本以外の国にルーツを持つ日本選手を、どんな競技でも見かけるようになった。Jリーグクラブの育成組織でも、もはや珍しい存在でもないという。肌の色に関係なく、出身にこだわらず、というグローバル化が広がっているんだろう。
その昔、ラモス瑠偉さんがサッカー日本代表になったときには「ずるい」という声がアジアの国から挙がったものだ。“純粋”な日本出身でないじゃないか、と。フランス代表には黒人系の選手にPKを蹴らせない時代があった。差別からなのか、PKを外したときの仕打ちが倍増するのを避けるからか、子どもの僕には分からなかったけれど。
一昔前なら「大坂選手は身体能力をハイチから受け継いでいるから……」と釈然としない人もいたかもしれない。でも今後はそんな声も小さくなると思う。それが当たり前になっていくなかで、違和感や偏見は薄れていくんじゃないかな。
欧州のクラブで感じることは、カテゴリーを問わずどこも世界選抜みたいなものということ。試しに日本で育ったアフリカ系のアスリートと話をしてみると、驚くほど日本化しているよ。差別に訴えるとき人は違いを強調するけど、違い以上に共通項も多いものなんだ。
僕のおやじも肝臓は黒人だから。50代で受けた移植手術で黒人の魂を受け入れている。国際化の時代を先取りしていたというか、“純粋”にこだわっていたなら命は永らえなかった。
話を戻すと、農作物では雑種で生まれた一代目が、大きさや耐性で親より優れるという法則もあるらしい。ルーツや文化が交じることの恩恵はサッカーでもあるだろうね。ストイコビッチと近くで一緒にプレーすると、自分もボールの止め方がストイコビッチ的になっていく。少なくともそういう気分になる。何事でも接触し、マネして、取り入れることから上達は始まるから。
小さいころから身体能力の高い子と競っていれば、周りの子も引き上げられ、プレーの水準が上がる。自分と違うライバルが隣に出現することで、自分も伸びる。異質はおそらく、メリットももたらしうるんだ。