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イニエスタやフェルナンド・トーレスといった世界的スターがJリーグにやってきて、関心を呼んで盛り上げてくれているのはとても素晴らしいことだ。そのうえでここからは僕の持論になるけれど、「でも、この日本ではあの2人にだって負けないよ」という自負のある日本選手やクラブも絶対に必要だと思うんだ。
ジーコ、リトバルスキーにスキラッチ。25年前、できたてのJリーグはそれはもう華やかだった。実績でかなう日本人がいるわけがない。でも「日本でなら、自分たちの方がスターさ」とヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)では考えられていたし、少なくとも僕はそうだった。反骨心メラメラでね。
しばらくしてFWエジムンドがヴェルディにきた。ブラジル代表での彼と対戦したことがある。とんでもないくらいうまい。だから紅白戦となると、みんなどうしても気後れして遠慮しがち。だけど北澤豪さんだけは、構わずガチガチと体をぶつけ、やり合い、言い争ったらしい。
どんなスーパースターでも関係ない。同じ土俵にいる以上は負けるわけにはいかない。だから練習から火花バチバチ、がむしゃら。それが「きーちゃん」のスタイルであり、僕もよく“ケンカ”を挑まれたもの。
すごい相手に「すごい」と感動して終わるようじゃダメで、差は認めたうえで「上回ってやる」と思えない限りは成長もしない。サッカーであれ演奏家であれ何であれ、プロフェッショナルはみなそうだろう。
これからJリーグはもっとグローバル化していくだろう。東南アジアの選手が増えるかもしれないし、外国人枠だってなくなるかもしれない。ただね、日本人のスターが出てこない限りは銀座のお姉さんは覚えてくれないものなんです。世界的スターにピンとこない世間の人も、中田英寿氏や本田圭佑選手は不思議と知っている。国際化が進んでも、何だかんだと日本人は日本人に肩入れしたくなるのかもね。
ラモス瑠偉さんはサッカーがまだマイナーで環境も恵まれない1970年代を生きてきた。通訳もなく、練習場へは小田急線に乗って通い、慣れない日本語のまま、よみうりランドで切符切りのバイトまでやった。そんな苦労の末に、エキスパートとして日本のサッカーを築き上げたという自負は強烈だった。だからこその負けん気から放たれた言葉を、今もありありと思い出せる。
「誰がきたって、ここは日本だよ。どんな外国人でも、俺は負けない。カズもそうじゃなきゃダメだよ。でなきゃ日本のサッカーはよくなんない」「カズ、ここは日本だよ。お前がスターだ。他のやつじゃない」。
たとえ相手がメッシやマラドーナだったとしても、あの誇りという名の反骨心はひるみもしなかったと思う。