©Hattrick
日本のサッカーや選手が得意とするもの、不得意とするものはこういうものだということが、この25年で少しずつ、でもはっきりと分かりつつあると思う。「日本らしい戦い」とはその延長線上にあるのだろう。
これは日本ならではだなあと、ブラジルや欧州で外国人監督と接すると気づかされるものでね。例えば予定のとらえ方。彼らは1カ月先のスケジュールなんてまず固めないし、翌日の予定しか伝えない監督もいる。そんな感覚だから、「今日の練習で何をするか、前もって把握したい」と日本の選手に聞かれても「知ってどうするんだ」となる。
横浜FCのブラジル人監督、タバレスも2カ月先の練習試合の相手を今決めることに面食らうらしい。Jリーグはどのクラブも先、先で予定を埋めていくから、その「せっかちさ」に合わせないと練習試合の相手すらいなくなってしまう。
ブラジル人監督に「少し休ませてほしい」と申し出ると、たいてい「そんなにサボりたいのか」と怪しまれる。現にサボって遊ぶ選手の多いブラジルならではの発想。僕も練習でキックの調子が悪いと、よく「昨晩遊んだから足が疲れているんだ」と決めつけられたものね。その人が育った環境を背景として生まれる理解のしかたがあるわけだ。
日本で「プレスをかける」という場合の指示は事細かい。「後方と動きを合わせて」「最初のところで奪えなくても、ここへ追い込んで奪おう」。ただJ2徳島ヴォルティスのスペイン人監督、ロドリゲスにとっての「プレス」は、とにかくボールに対して圧力をかけることらしく、力点がどうも違う。タバレスもそう。選手が「出ていって、空いた場所を突かれたらどうするの」と心配しても取り合わない。「気にするな。俺がケアするから」。
プレス1つですら認識が食い違う。欧州とで見ている「絵」が少しずれる。戦術の大きな全体像となると……。日本は監督も選手も熱心に勉強し、戦術が話題に上らない日はないくらい。一方で、ヴィッセル神戸に入団したポドルスキは「日本の選手は技術がある。運動量もある。でも“戦術的”ではない」と述べてもいるんだ。
では僕が海外で接した監督から戦術的なことを数多く指示されたかといえば、そうでもない。海外組のある選手も「いやあ、欧州には戦術的でない監督、多いですから」だって。これは僕ら日本人の考える「戦術」と、彼らの指す「タクティクス」とで、意味合いや中身がどこか違うからじゃないかな。日本人が「野球」で思い浮かべるものと、米国人が「ベースボール」で示すものとが微妙にずれるように。
あるいは僕らは、飲み込みやすい部分だけを取り入れているのかもしれない。分かったつもりで、実は分かり切れていないこと、けっこうあるのかも。自分たちでは気づいていない良さが、まだ眠っているかもしれないのと同じようにね。