BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2018年03月30日(金)掲載

“サッカー人として”
2018年03月30日(金)掲載

矢面に立ってくれる人

 本番前まですごく調子がよかったのに、本番が始まるとよくないときがある。状態は悪かったはずが本番で体が動いてくれることも。日本代表も直前の親善試合の出来がワールドカップ(W杯)へ直結するわけじゃない。別物かといえば、そうかもしれないね。


 見る側は、準備の段階で順調ならば「今回はやってくれそうだ」と期待を膨らますことができる。でもやる側の僕ら選手は、うまくいけばいったで「どこかに落とし穴があるのでは」「本番ではこうはいかない」という心理に陥る。どちらにしても本番に対する不安は常にあって、そこから逃れることはできないんだ。


 前回W杯では本番前までずっと順風だったのが、初戦のコートジボワール戦後半から流れが一気に逆流した感じになった。あるきっかけで流れが悪くなるということは、きっかけ一つで悪い流れも変わりうるということ。何がそのスイッチなのか、分かりやすい答えがあるわけでもない。


 得点すればメンバー選考に「残れる」、しなければ「残れない」――。そんな議論には首をかしげる。じゃあ本田圭佑選手らFWはどんな「結果」を求められているんだろう。勝敗という結果ならチーム全体の問題だ。本田選手が得点に絡むことがなければ「当落線上」と書かれる。でも得点を生まず、絡んでいないFWを「当確」とする論調もある。基準はどこなの?


 もし25歳の僕が今の代表にいたとしたら本田や香川真司、岡崎慎司の3選手がいてくれればどれだけ心強いことか。経験の浅い僕はピッチで香川選手と一緒になることで生かされるだろう。どう考えてもあの3人は枠内にいてほしい。あ、岡崎選手はいるとまずいか。僕が出られないのも困るな。


 「3試合10分ずつ、計30分であっても、W杯でオカは必ず点を取りますよ」。2010年W杯で岡崎選手の同僚だった松井大輔選手は確信めかして言うんだ。


 勝てなければ、点が取れなければ責められてきた3人だ。本田選手がいれば責めは彼が引き受けるわけで、周りは気をもまずに済む。活躍して新聞の一面を飾る人はいても、点が取れなくてトップ記事になる人はそういない。無得点なのはみんな一緒でも「本田がゴールしなかった」となる。ほかのFWは楽だし、そういう評価に伴う悔しさをバネにもできる。そうした存在がいることが、どれだけチームの助けになることか。