BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2017年11月24日(金)掲載

“サッカー人として”
2017年11月24日(金)掲載

超えられない師匠

 ブラジルからすると、日本代表は何ともくみしやすい相手なのかもしれない。自分たちの良さを出すのにぴったりというか、いつ対戦しても、日本はこてんこてんにやられてしまう。


 これは、日本では1+1が2になるというふうにサッカーを教わるけど、向こうは1+1を3や4へ膨らますサッカーをするからかもしれないね。欧州と日本なら、組織や形式といった共通の理解・基盤がある。だから強豪相手にもいい勝負もできうる。でもブラジルと戦うとなると、共通理解の枠からはみ出る驚きに出くわす。「え、ここでパスをするの」「そこへ選手が出てくるのか」。教科書通りとはいかない要素も強いから、うまくはまらず、やりにくい。


 そんな面白みを表現していた選手にマルセロがいたね。同じSBでもベルギー選手とは大違い。日本の選手が圧力をかけると、ベルギー選手は安全第一でボールを下げてくれる。半身で逃れながら横パスやバックパス。こうしてくれると、そのパスを合図に日本が連続的なプレスをかけられる。


 でもマルセロは違う。圧力がかかろうが堂々と向き合い、逆に相手の目の前にボールをさらす。簡単には奪いにいけない。ヘンに突っかければ、逆に抜き返される。


 日本は開始から勢いよくプレスをかけていた。でもあのマルセロの最初のプレーを見た瞬間、これは大変な試合になると僕は思った。「もっと取りに行きたかったけど、行けなかった」が本音じゃないかな。行けば行ったで、奪えそうで奪えない“鳥かご”状態。奪いに行かず引けば引いたで、好きに回されてしまう。


 一度、ブラジルに青い第2ユニホームで戦ってもらうのはどうかな。あのカナリア色には強烈にすり込まれたものがあり、自分が弱く思えてくるというか。今の選手はもうブラジルに対してそんなコンプレックスはないのだろうけど、代が変わろうとも変わらぬ関係性がある気がして。


 これまで数え切れないブラジル人が日本にサッカーを教えてくれた。ジーコもそう、さかのぼってセルジオ越後さんや与那城ジョージさんもそう、みんな伝道師だった。そこと一戦交えるとなると、師匠と弟子みたいになってしまう。いくつになっても、大人と子ども。


 弟子って、師匠をなかなか超えられないんだよね。