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15歳の久保建英選手について僕は多くを語れないけど、バルセロナのころのはじけるプレーはやはり鮮烈な印象として残っている。
自分の身近にいた神童といえば、かつてフジタ工業でもプレーしたカルロスを思い出す。僕がサントスにいた18歳のころ、同い年の彼はすでにクラッキ(名手)として知れ渡り、コリチーバFCで一緒になった。
ジーコやベベトを擁するフラメンゴと戦った一戦、僕は先発、カルロスは後半から出てきた。最初のプレーで2、3人をヒョイヒョイ抜き去る。試合後、相手の名将テレ・サンターナがうなって「あいつは誰だ」。行く先々でそう言われ、代表にも選ばれていった。
トラップはボールが吸い付き、止め損ねるのを見たことがない。ドリブルすれば奪われない。でもね、努力しない。21歳の僕に「俺が考えるからお前は走れ」と年長者みたいなことを言い、練習は怠け、貸したお金も返ってこない……と、難点はあったけれども必見の名手だったね。
ペレ2世、マラドーナ2世と称された若き名手の多くは、消えていった気がする。ブラジルの選手は中学や高校年代でもプロとして同列に扱われ、一切手加減なくたたかれる。日本の高校選手権で選手を悪く言う解説者も新聞もまずないけど、サンパウロの大会に出たころの僕なんて、ボロボロですよ。罵倒され、最低と寸評され。でも、そこで負けないと強く育ちもするんです。
今のJリーグではプロ1年生が研修を受ける。これは言ってはだめ、こう答えれば――。でも教えすぎ、縛りすぎなのも考え物でね。模範だけだと、メディア対応一つでもみんな個性がなくなっていくものね。
僕の研修はというと、サントスの先輩、セルジーニョがベンチに下がり、試合中なのにシャワーを浴びて、そのバスタブで取材に応じる姿に驚いて。でもメディアや、その先にいるファンを喜ばせることも大事なんだと感心したし、言うべき意見ははっきり述べる彼から言動の姿勢を学びもした。
彼と練習試合へ向かう車中、高速道路の料金所でお金を払おうとした。すると彼は僕を制し、係員に「おう、俺だ」と。料金は取られず。これはマネしていませんが。
大人に混じって戦う久保選手は、発言も大人びている。ただ、大人び過ぎなくても構わないと思う。15歳らしさ、伸びやかさ、やんちゃさが面白みにもなるだろうから。何より、彼はサッカーでは誰にも負けないという意思が顔にありありと出るのが魅力的ですね。