BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2016年11月25日(金)掲載

“サッカー人として”
2016年11月25日(金)掲載

みんなで一つの方向へ

 最終戦の松本山雅FC戦、僕らはアウエーで健闘し、上位を追い詰めた。いい戦いだった。ただ、終わってみれば勝っていない。そんな風に、内容が良くてもここぞという時に勝ちきる力が足りなかった一年だったと思う。節目ごとにチャンスの一戦を落としてしまった。


 8位の成績は善戦としても、「自分たちはこのサッカーで戦っていける」というものはまだ強固にはなっていない。「善戦」までなら、たぶんどのチームもできる。もしかしたら僕らが22位でもおかしくない。それが正直なところだろう。


 クラブとしてより成長するには。松本がいい見本になってくれているんじゃないかな。祖父から孫まで3世代が同じユニホーム姿で見に来る。その熱意に選手が応える。スタジアムに入るとアウエーの僕らまで乗せられて力が出るものね。


 選手が目標へ向かう。デスクワークの人もそこを目指す。クラブでご飯を作る人も、サポーターも、そこを……。J1から落ちたならみんなの責任、だからみんなではい上がろう。一つの太い線になっていくのがはっきりと伝わってくる。


 選手が「フロントがダメだから」と言い始め、サポーターは「選手がダメ」と怒り、フロントは「地域性のせいで」と嘆く。こうなると、全員が頑張っているはずなのに全員による犯人捜しで終わってしまう。そこに陥らないように。組織が勢いづいているときはそんな愚痴も収まり、迷いも薄れるのだけれどね。


 それだけ勢いには力がある。サウジアラビア戦の日本代表も、原口元気選手たち新しい力の勢いがすごかった。僕らの頃もヒデ(中田英寿氏)や川口能活選手の勢いが強烈でね。突き上げられる側の僕は「やばい」ともがき、もがき、落ちていきました。泳ごうとしているのに、もがくほど逆に沈んでいく、あれです。


 でも一度ザグレブという外へ出て、妙なプライドから放たれ、新たな自分を発見すると力が抜け、またグンと浮かび上がることができた。面白いもんだね。勢いに「負けるもんか」と懸命に手足をかいていたときは沈んでいったのに。そして勢いとベテランががっちりかみ合うと、すごくいいものが組織には生まれる。


 理想のクラブをどう作るか。みんなが考えていて、みんなができていないことでもある。それでも一つの方向へ、みんなで泳いでいかないとね。