BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2016年05月13日(金)掲載

“サッカー人として”
2016年05月13日(金)掲載

奥深きレスター物語

 イングランド・プレミアリーグを優勝したレスターをみんなが「すごい」「奇跡」と語る。僕も聞かれれば、何がすごいのか説明しようとする。でも我ながら、すごさの本当のところは、分かっていない自分がいるんじゃないかと思うんだ。


 これは「三浦知良ってのは……」と日本の誰かが褒めてくれても、外国人にはよく分からないのと似ている。ワールドカップ(W杯)も出ていない、代表キャップ数など記録ももう抜かれちゃってる。今や欧州トップリーグでバリバリ活躍するすごい日本選手が大勢いるのに、何でと。それはたぶん同じ時代を過ごした人々が僕に重ね合わせるもの、見いだしてくださる価値のようなものがあるからだろうけど、そうしたバックグラウンドを共有していないとなかなか理解しづらい。


 同じことが僕らから見たレスターにもいえる。何しろたどり着くまで133年。祖父から孫へ5代にも渡ってファンやチームが重ねた時間、編まれたストーリーがあり、簡単には知ることのできない深みと重みがそこにはあるはずだから。


 向こうの文化一つをとっても、僕らは分かった“つもり”かもしれない。例えばジェノアとサンプドリアはともにイタリアのジェノバを本拠にする宿敵。あの町でジェノアひいきのタクシー運転手にジェノア戦の結果を聞くと、こう返ってくる。「それより悔しいのはサンプドリアが勝ったことだ。うちの勝敗はどっちでもいい。サンプドリアが喜ぶことが許せん」。そこまでの愛憎劇、Jリーグではピンとこないでしょう。


 ファッション界で「ピッティ」といえば日本も注目するイタリアで先端の見本市だ。でも知り合いの洋服屋が言うには「あそこに出展するのは資金力のないブランドでもあるんです。グッチとか世界的ブランドは単独でファッションショーができちゃう。小さくてそれができないから、寄り合う」。マイナーゆえの人知れぬ事情もあるわけだ。レスターとも通じるものがあったりして……。


 そのグッチも今の地位を築くまでに創業から100年近くかかった。レスターの132年間といい、事を成すには時間がかかるということでしょうか。気になるのは、レスター物語が映画化されるとして、岡崎慎司選手役は誰がするんだろうということ。