BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2015年11月06日(金)掲載

“サッカー人として”
2015年11月06日(金)掲載

タイトルを得る心意気

 僕の育ったブラジルでは、選手の経歴紹介がやたらと長い。タイトルと名付けられそうなものは残らず盛り込まれる。日本だと恥ずかしくて引っ込めそうな、例えると「○○町内カップ」みたいなものまでも。


 それだけタイトルというものにこだわりが強くて、日本ではよく「カズさんは生涯で何点ゴールしましたか」とは聞かれるけど、いくつタイトルを取ったのかはあまり質問されない。でも欧州のクラブは獲得したタイトルの数、そしてそれをもたらした選手をすごく評価する。


 日本でプレーした外国人選手で一番すごいのは誰か? 彼らなら、リトバルスキー(ドイツ)と言うだろうね。1982年から3回続けてワールドカップ(W杯)に出場して1回優勝、2度準優勝。ジーコよりすごい、という評価も大げさではないよ。


 J2での優勝をタイトルに数えたがらない人々がいる。でもJ2王者もすごく立派なものなんだ。W杯やナビスコ杯の歴代優勝チームをなぞれば分かるけど、タイトルをつかみとれたチームも選手も、全体のほんの一握りだけなのだから。


 鹿島が制した今年のそのナビスコ杯。90分間圧倒し続ける、あれほど完璧な決勝は久しぶりに見た気がする。あの勝ち方なら、アジアクラブ王者にもなれたんじゃと思ってしまうね。


 横浜FCがJ2を優勝して昇格した2006年。前半を0-0で終えさえすれば「もう大丈夫。負けない」と全員が確信を持つことができた。いまは2点リードしていても「逆転されるかも……」と不安になっていってしまうのが、残念でならない。


 ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)のころ、0-1と先行されても「負けるかも」なんて考えもしなかった。実際に2点取られようが4点奪って勝てた。「負けることはない。最後には勝つ」。おごりや過信ではなく、自然にそう信じられる精神状態こそが強さなんだ。


 また1つタイトルを手にした小笠原満男選手の語りぶりも、同じメンタリティーをまとっている。相反するようだけど、危機感というものもそこには同居している。若手が出てくれば「若い方がいい」とイスを奪われかねないチームでも、出続ける。そこにあるのはいいメンタル、その根拠となるいい練習。僕のように1年で2度もケガして、チームが下降すると自分も沈んでしまう二流と、超一流の違い。タイトルを取り続けるメンタリティーを見習わないとね。