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サッカーなるものが珍しかった40年近く前。静岡ではテレビからサッカー情報番組が流れ、サッカーが日常の光景としてあった。何を隠そう、日本にサッカーショップといえるものが初めてできたのも静岡です。
Jリーグが誕生するずっと前から市民クラブの清水FCがブラジルへ遠征し、少年団も海外チームと盛んに交流していた先進地で、高校で静岡を制するのは全国制覇と同じくらい難しかったほど。あるときの日本代表はメンバーの11人、ほぼ半数が僕も含めて静岡県出身だったくらいだから。
そんな静岡の清水エスパルスがJ2へ降格する。「その場しのぎの寄せ集め集団」と補強のあり方を問う声も飛ぶ。でも寄せ集めで勝っているチームもあるよね。選手を自由にさせて勝てば「のびのびが良かった」とされ、負ければ「のびのびさせて」規律が足りなかったと批判される。何が正解なんだか分からず、僕らの世界は結果がすべて。
世界の名門にも降格の歴史があり、浮き沈みを繰り返す。ちょっと怠ければだめになり、名前では生きていけない。いわば永遠の努力が必要なんだろう。サッカーライフはときに厳しく、険しい。でも乗り越えたときにまた強くなり、よりサッカーが楽しくなる。
僕が所属したブラジルのキンゼ・デ・ジャウーは今や4部相当のリーグでもがく。それでもクラブは存在し、人々の希望として生きている。いつかまたサンパウロなどビッグクラブが街にやってきて、自分たちのジャウーと戦う日を楽しみにしている。エスパルスもいまが踏ん張りどころだね。自分たちがやっていること、サッカーで批判されるうちは、まだいいんだ。1番怖いのは無関心。降格や低迷したことにすら興味を持たれなくなるのはつらいよ。
浮き沈みがあろうとも、ぶれず、ひと筋に生きていく。例えば長嶋茂雄さんや王貞治さんは、ずっと野球人。あれもこれも手掛けていく人もすごいけど、何かを心から好きで、真剣に続ける人々の仕事やお店、行動、言葉には、ならではの魅力があるよね。
損得よりも「好き嫌い」の方が、生み出すパワーが大きいんです。人間だから損得勘定は考えるよ。でも自分もそうだったけど、やはり好きの力が損得に勝る。