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中学生までは僕も夏の甲子園に夢中になっていた。かつての原辰徳さん、工藤公康さん。若いスターが出てくる場面に立ち会うのはいいものだ。やっぱり若い人がいるところには活気と勢い、ピチピチ感があるよ。
いまは試合もよく見られず、ニュースでチラリとしか見ない。でも意識してニュースを見なくても今年は「清宮(幸太郎)」という名前が自然と目に入ってきた。存在がインプットされて関心が向き、噂通りに打つと「やはりすごいんだ」と納得する。1人いると、向き合い方がだいぶ違う。
巨人のV9時代。3番に王(貞治)さん、4番に長嶋(茂雄)さんがいて、2人に目が行くうちに高田(繁)さんや柴田(勲)さん、という風にほかのメンバーにまで詳しくなった。今年も清宮選手をみることで、早実の4番は加藤選手という捕手で主将で、彼もいい選手らしい……と知っていく。1つ軸ができると、周りも栄えるというか。
すると次はそれを倒そうとする敵が出てきて、ライバルまで注目され、人気になる。1人の注目選手で相乗効果が大きく広がっていく。ゴルフだと石川遼さん、テニスなら錦織圭さん。サッカーでも同じだね。
いまでは甲子園がゴールじゃなく、目指すは大リーグという高校球児もいるだろう。サッカーだとさらに日本代表という最終目標がはっきりしていて、代表でワールドカップ(W杯)に出るまではすべて通過点、と高校世代もとらえている。
ただ、そもそも「最終目標」などは人生にない。頂点のW杯ですら終着点にはならない。W杯で優勝しても、すぐ敗退しても、そこは変わらないと思うよ。目標とは到達して一度は達成となるものだけど、終わりは訪れない。それが人間の欲であり、物事の進歩を支えてもきたものだから。
清宮選手にも流れがあったのだと思う。ホームランがほしくて、でも県予選から打てておらず、期待は集めるなかで、1つ打った。ホームランが出てからは素人目にも打席で硬さが抜けていた。それほど「1つ」というのは大事なんだ。
だから僕らも、1つのゴール、1つのプレーで、極論すれば人生さえも変わると思ってやっている。1つのヒット、得点、勝ち負け。その1つのために365日を費やし、積み重ねられる。それがプロなんだね。