BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2015年08月14日(金)掲載

“サッカー人として”
2015年08月14日(金)掲載

代表ユニホームの器

 日本代表を外から見るのと、中に入ってやるのとでは、見えてくるものが違う。準備期間の少なさを言い訳にできないのが代表としても、1年で監督が2度代われば、外からはうかがえない部分で大変なはずだ。


 国際試合の経験が浅いうえ、初顔合わせのメンバーで、4日前はリーグ戦をしていた。そんな事情と制約のあった東アジアカップの経験はワールドカップ(W杯)予選に生きる。北朝鮮戦の逆転負けも、厳しい展開で先制されながら追いついた韓国戦も。代表歴の長い欧州組の主力はW杯をまたいでかれこれ5年近く一緒に戦い、パッと集まっても合わせられる成熟したものがある。それとまるきり同じ連係を、とはいかない。


 彼らはなかなかポジションを譲らない。W杯で敗退すれば「代えろ」「若い選手を使え」と世代交代を求める声は出る。でもザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチと、やりたいサッカーも哲学もこれだけ重ならない監督3人なのに、勝ちたい試合で選ぶ選手はほぼ同じ。「いい」と思わせる何かがあるのであって、選ばれ続けている事実自体が彼ら欧州組の実力でもあるんだ。


 監督業は勝負師というか、勝つか負けるかふたつに一つ。だから技術や細かな理屈だけでなく、選手に勝ち運があるか否かも見定めるところがある。かつて加茂周監督が川口能活選手を抜てきしたのがそうじゃないかな。高校選手権で優勝、入団直後の横浜マリノスでも優勝、28年ぶり出場のアトランタ五輪代表でブラジルにまで勝っちゃった。使う側に「こいつは勝利をもたらしそう」と思わせるのも、大事な力のうち。


 デビュー戦で大敗、その後も出場するとなぜか勝利に見放されるGKがかつて神戸時代にいた。クラブで活躍するのに代表だとそうならない選手も。ブラジルから日本に戻った直後の僕は逆パターンで、読売クラブ(現東京ヴェルディ)ではさえないのに、代表だとはまっちゃって、行くたびにいいプレーができた。監督やサッカーとの相性、時代、流れ……。


 代表のユニホームを着慣れた人は強い。サッカーに限らないかもね。自分が仕事着を〝着させられてる〟感覚、ないですか? 着慣れるには実力を結果として示し続けないと。借り物に見えるうちは、まだまだ。