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練習試合で大宮へ出向くと、播戸竜二選手(35)が温かく出迎えてくれた。ともにFWの身、川崎を6-0で退けたドルトムントの試合に話が及ぶ。ボールを動かすスピード、ゴールへ向かうスピード。あれだけみせつけられると、外国人監督が欧州でプレーする選手を日本代表に呼びたくなるのも分からなくないというか。整理整頓された、とでもいうべき美しさがあるよね。
Jリーグだと周りが困りに困って、FW頼みでスペースへポン、なんていう場面は多い。これだとDFも対応しやすい。ドルトムントだとFWが動き出した、その一番いいタイミングでボールが出る。「あんなクロス、普通はきませんよ」と播戸選手が冗談めかす。
選手は何事も慣れていく。1つの試合中でもそうで、最初に速いと感じた相手も、対応し続けるうちにさほど速く感じなくなる。吉田麻也選手(サウサンプトン)らがうらやましいのは、この慣れと成長が毎日生じる環境でやれていること。僕が「すごい」と感じるプレーがあったとしても、吉田選手には何でもないかもしれないわけだ。
あの試合、関係者によると前日練習なら飛び入りできる奥の手もあったみたい。もちろん横浜FCの練習があるので参加は無理だし、「なんで横浜FCの選手がドルトムントに」となるけど、それでもやってみたいもの。「僕も練習だけでいいんでバルセロナとかに入りたいっすよ」と播戸選手も相づちを打つ。FWなら常にそのくらいのマインドがないとね。
終盤戦、まずは播戸選手の5得点を抜くことを目指します。先日に35歳11カ月16日で達成したハットトリックは日本人最年長記録らしい。「じゃあ、それも抜くわ」と宣告したら、「いやいや、それをされると抜き返すのがえらいことなので」と制止されました。でもね、こうやって一人ひとりが発奮すればチームの順位も上がるはずなんだ。横浜FCはこの8試合で2得点だけ。こういうときはFWが点を取らないとムードも上向かない。
コンディションさえ整えば30代でもFWは通用する。「もう年だから」なんて絶対に考えなくていい。そう播戸選手にも念押ししておいた。「若くて『いいな』と思うFW、そんなにいないですよ」と彼が語るのは強がりでもない。DFを一瞬だけ外す動き、ポジショニング。得点のための経験が僕らにはある。ヨーロッパに渡れば痛感することで、うまい選手ならいくらでもいる。でもFWはそこだけじゃないから。