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この春に社会人のスタートを切った新入社員のみなさんも、仕事に慣れてくるころにはどこかで壁にぶつかることと思う。壁を実感し始めるのも「慣れてきたから」こそ、というかね。
18歳でプロになった僕も、19歳でベンチ外に甘んじる現実に苦しんだ。21歳のころ「自分も成長したな」と実感できたけど、その後にもまた壁が。プロの壁、自分の実力のなさ。サッカー選手も成熟するまでに最低3回は壁にぶち当たるね。
最初は悩む。それが日常的になり当たり前になると、悔しさを忘れがちになる。「自分はここまで」と思うようになり、毎日を何となく「こなす」だけになってしまって……。
そこに陥らなかったから僕は長く続けていられるのだろう。何歳であろうとレギュラー争いに敗れれば腹が立ったし、ミニゲームで負けたら大人げなくムキになった。壁に屈して、負けるときはある。でも乗り越えられないことに慣れるのはよくない。
ホテルのポーターと聞けば、荷物を運ぶだけの単調な仕事と思う人もいるでしょう。ラスベガスでこんなポーターに出会った。クルクル踊りながらキャリーケースをはじき飛ばし、ムーンウォークで滑り寄っては、ピピピと笛を鳴らして車を誘導する。マイケル・ジャクソンそのまんま。彼はたぶん、どうすれば楽しめるかを考えたんだ。飽きてきそうな物事も、いかに楽しくできるのか。この姿勢は大事だよね。楽しげな彼は周囲も楽しませている。
サッカーの練習は毎週毎週、それほど代わり映えするものでもない。端から見れば似たようなことの繰り返し。「飽きないの?」とよく聞かれるけど、飽きないね。こんなやり方もあるのかと、毎回喜びがある。なんでうまくできないのかと、毎日悔しさがある。ヨーロッパで活躍する日本人選手も同じじゃないかな。
「ここをこうしよう」「もっと良くしたい」という意識があればマンネリの余地はない。あしきマンネリや惰性の芽は、自分で作っていることが多いんだ。ボールをゴールへ入れるというサッカーの根本は昔のまま。ただ、より組織が重視されてフィジカル面も強調されてと、アプローチの仕方は少しずつ変わっている。だから新しいものも日々見つけ得る、そんな新鮮な気持ちでやっています。好きとはいえ、依存症ですね。でも悪い症状でもないでしょう。