BOA SORTE KAZU

  • Home
  • Message
  • Profile
  • Status
  • Column
Menu

BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2013年11月22日(金)掲載

“サッカー人として”
2013年11月22日(金)掲載

野心を駆り立てて

 この10年で最も輝いた男性という賞を雑誌「GQ」からいただいた。個人タイトルに縁のない年月が評価されるのはうれしい。続ける・諦めないという価値観は、追い求めてきたものだから。


 1年だけ頑張れる人。2年の人、10年の人。ただ、20年頑張れた人は「20年頑張ろう」と思っていたわけではないと思うんだ。一日、一年、積み重ねた結果が20年になる。よくなりたい、上にいきたい。野心に似た感情がなければ、実際に「上」にはなかなか届かない。自然に成り上がれた人、少ないんじゃないかな?


 まだ活躍したい、できる。この野心が不思議となくならない。この2試合続けてベンチ外になった。「46歳なんだからたまには外れてもいいでしょ」とみなさんは思うでしょう。僕はプロになりたての20年前と感じ方がまったく変わらない。「まあいいや」が頭に浮かばない。なにくそ、悔しい。これが野心だと思う。


 20点取ったら30点取るFWが出てきて、100メートルを9秒9で走れば9秒8で追い抜かれる。上を目指すライバルは次々と現れる。だから次から次へ、野心も育み続ける。でも野心だけではだめ。努力が伴わないと。若い頃は「監督が」「誰々が」と考えがちだった。いまは自分に矛先が向く。「俺は何が、足りないんだ?」。野心をエネルギーに変えるのが上達したなと、思う今日このごろであります。


 周囲の厳しいプレッシャーが、成長してやるという反骨心、しなければという自覚を芽生えさせもする。いまの日本代表はみんなこの道筋を経験してうまくなっている。責任を負わされ、ちょっと悪くてもぼろくそに批判されて、たたかれるほど強くなっていく。僕もブラジルやイタリアでバッシングに成長させてもらったから、よく分かる。そこで欧州遠征のベルギー戦のように成果を出せば「ほらみたか」と痛快だ。プレッシャーのないところ、野心だけでも成長しにくい。


 ぎらつきながら余裕も欲しい。一つのミスに「こんなプレーで申し訳ない」という反省心と、「宇宙規模で考えれば、どうでもいいな」とはねのけるずぶとさと、僕は両方持っています。表があれば裏があり、人生は掘ったり掘られたり。


 僕はトップじゃない。でも自分にしかできぬことを積み上げることでトップになるやり方もある。誰もマネできない領域へ、半歩。そう自分で野心を駆り立てる。