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栃木SC戦を控えた午前、コンフェデレーションズカップ決勝を見ていた。無性にまた見たくなって、懲りずにこれが3回目。ブラジル国歌斉唱。演奏がやむ。観衆は歌い続ける。むしろ、より大きなうねりになる。「我々は復権する。サッカーのエキスパートは我々だ」。7万人全員がその心意気を共有している。テレビ越しの僕でさえ心が震える思いがした。
そして、キックオフに続いて放たれたセレソンの選手のあの真剣さ。戦う気持ちって、あの域まで持っていかないといけないんだね。ネイマールのゴール。なんて迷いがないんだろう。自分も得点をとり続けていた頃、ああだったよな、とにかくゴールへ打っていたよな、迷っちゃいけないんだ――。
意識の底で思い出したような出さないような。栃木戦の開始16秒でいいパスがきたとき、思い切り振り抜くことができた。トラップからシュートまでの連動、撃ち抜いたコース。「欧州のリーグで見るようなゴールだね」。サッカー界以外の知人もそんなメールをくれた。これだけたくさんの方に喜んでもらえると、ただの1点でも大きな1点なんだろうね。
コンフェデレーションズカップ直後はあまりの刺激に「ちょっとブラジル行きを考えよう」と意を新たにしたのだけど、実際に得点すると「カズはもっといけるかも」と周囲も大げさな夢を抱き始めかねないようで……。いいことなんじゃないかな。僕もそうやってみなさんと夢をみて。
ゴールには力が、説得力がある。「すごい」とみんなが言う。でもね、僕は毎日トレーニングすることの方がすごいことだと思う。年間50試合出場していたのが10試合に減ったとする。それなら10試合分の練習で済ませればいいかといえば、やっぱり50試合分の練習をしないとだめなんだ。
5分しか出られない、出番が5試合に1試合しかない。それでも同じことを、同じテンションで、高い意欲で変わらずにやる。1点を取ることよりもよっぽど大変なことだし、よっぽど評価されるべきことだよ。そういうものがなければ、どこかにはたどり着かない。努力がなければチャンスも生かせない。僕らに「たまたま」なんて絶対にないから。
リーグ最年長ゴールはご褒美。付録です。大事な“本体”は練習なんです。