BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2013年06月21日(金)掲載

“サッカー人として”
2013年06月21日(金)掲載

ブラジル 強さの源に文化あり

 ブラジルの人々には「これじゃ、できないよ」という発想がないと思うんだ。サッカーでの話だけどね。ピッチがどう、シューズがどう、雨や風がどう、など関係ナシ。場所さえあれば喜んでサッカーをしちゃう。


 足場がびしょびしょでボールをつなげないなら、リフティングしながらドリブルしてやろうと考える。ビーチで足もとが分厚い砂なら、ボールを単に蹴らずにすくって、うまく浮かせて前に運ぶ。足のもつれる砂浜でどうすればシュートを打てるか。「無理だ」と言わず、考え方の目先を変えて、頭を使い、楽しむ。だから、うまくなるんだ。


 浜辺に空き地、街の至る所にサッカーはある。みんなサッカーをしたくてしょうがない。「カズ、草サッカーに行こうよ」。若い頃の僕も日系人によく誘われてね。「すぐそこだからさ、行こう」。3時間もかかる場所へ連れて行かれて。


 そこでは10歳の少年から50歳の大人まで、元プロも下手くそも一緒くただ。そしてみんな本気になる。大人は容赦なし、子どもを子ども扱いしない。子どもも「僕は子どもだから」などと逃げない。一生懸命やらないと「しっかりやれ。ばかもの」と大人に怒られる一方、子どもは子どもで「おっさん、もっと走れよ!」とやり返す。勝負にこだわる姿勢を自然と吸収していく。タフにもなるよね。


 子どもだけ、大人だけ、会社の人間だけ、で固まる世界でないから学ばされる機会が多い。もちろんブラジル社会にも上下関係の厳しさはあるけど、ピッチ=仕事の世界では年齢も上下関係も関係ない。会社にも通じることじゃないかな。部下が上司のミスに「しっかりしろ」と言える部署、成績が上がると思うよ。目下が目上を、目上も目下を助けるようになる。ゴミが上司のそばにあり、上司が部下に拾わせる。でも自分の近くのゴミなら、上司だろうが部下だろうが、拾える人間が拾えばいい。


 年齢や属性が身を守ってくれない世界で生き残るには、口だけじゃだめ。自分の力を見せるしかない。この日曜の試合で力を見せれば、次の日曜も同じ場に立てる――。僕もその一心でブラジルを生きていた。厳しくとも、人々が混じり合い、近くに感じられたあの世界が僕は好きだった。


 コンフェデレーションズカップで日本代表を3-0で打ちのめしたセレソンの源には、文化の強みがあるんだ。