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ワールドカップ(W杯)予選のアウェーで日本に0-6で負けたヨルダンが、ホームで2-1で勝つ。ホームとアウェーの境目の薄いJリーグに慣れた人には想像しにくいことだろう。ホームの彼らは頑張る。「ドーピングを疑った方がいいぞ」とブラジル人なら言うに違いないほどにね。
1993年のW杯南米予選。ブラジルがボリビアへ乗り込んだ。会場は標高約4,000メートル。僕もサントス時代にメキシコの高地を経験したけど、空気は薄くボールの飛び方も違うし、試合中なのに鼻血が出た。だからブラジルも「0-1の負けならよしとする」という感覚だったらしい。結果は0-2。ボリビアは「もはやブラジルだけが強いわけじゃない」と沸き立った。
1カ月後、真夏のブラジルでのホーム戦。ボリビア代表はブラジル北東、赤道近くのレシフェに連れて行かれた。高地の涼しさに慣れた人間には酷な気温38度。会場は芝生も刈らず足が疲れるようにしてある。テレビの実況がはやし立てる。「これで走れるか? ボリビア代表よ。痛い目に遭うぞ。さあブラジル、見せてやれ」。王国は相手を6-0とコテンパンにやっつけた。
W杯をかけて、こんなやり合いが世界のあちこちで繰り広げられる。サッカー文化って面白いなと思うし、厳しくもあるよね。
僕らは勘違いしそうになる。吉田麻也選手(サウサンプトン)はイングランドでプレーしているから中東の選手には抜かれないはず、プレミアリーグのFWの方がすごいから――。そう単純じゃない。サッカーに「絶対」はないんだから。
夢のあるセレソンとして語り継がれる1982年W杯ブラジル代表。「黄金のカルテット」、ジーコらあれだけの選手が集まったチームでも勝てない試合はあった。世界を代表する技術の持ち主なのにカナリア色のユニホームを着ると潰れていく選手はたくさんいる。欧州歴戦の名選手、ジェラード(イングランド)に「代表戦ほど緊張するものはない」と語らせるものは何か。代表というものは、違うんだ。
「本当に悔しいです」。香川真司選手(マンチェスター・ユナイテッド)からメールが届いた。代表の難しさを自力で乗り越えてみせる、と決死の思いだったのだろう。無念さが手に取るように伝わってくる。
でも、この苦しさを戦い抜くから強くなれるんだ。