BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2012年09月21日(金)掲載

“サッカー人として”
2012年09月21日(金)掲載

痛みにケガ、休まず鍛えて克服

 アスリートはギリギリの戦いの日々を生きている。試合中の出来事など心覚えがあるものだけでなく、長年の疲労が蓄積した結果だとか、どこでどういうふうになったのか見えづらい異変にも見舞われる。予期せずケガに襲われ、前日には痛くなかったところが朝になると痛むことも。先月下旬、突然背中に張りを覚え、4日ほど練習離脱を余儀なくされた。


 休めばいつものルーティンは途切れる。本来の80%まで戻らないとやれない選手、30%で構わないというタイプ、いろいろいるけれども僕は一週間も休むともう限界。多少の痛みでもやらずにはいられない。やるべきことをやると決め、やりながら鍛え、痛みが去るのを待つ。休みより鍛えることを優先してしまうね。ただし今回は最初の数日はトイレへ行くのも一苦労。さすがにやれないよね。このコラムも一回休みました。


 何歳だろうと、体のどこにも痛い箇所がない選手なんていないんじゃないだろうか。僕も20代でボールを蹴れないほどの足首の痛みを経験してきた。みな、どこかしらに故障を抱えつつ、それを越える肉体を作る作業と向き合っている。遠征先でベッドが柔らかすぎれば、朝起きると腰に痛みを覚える。ならば、と腹筋と背筋を鍛え直す。柔らかいベッドでも痛みを感じなくなる。痛める、克服するを繰り返していくんだ。


 休まずにやって成功ばかりだったわけじゃないよ。ケガをおしてプレーして悪化させたときもある。それでも45歳になった今もこうしてプレーできているわけで、「あのとき、やる判断をしてよかった」と思えることの方が多いよね。休むより、やることで「やれる」という自信に変える。そうやって強くなったと思う。


 この歩みがあるから、今回も「また戻せる」という感触がある。今週も連日、体幹などを一時間半ほど鍛え、続いてグラウンドで走り心肺に刺激を加え続ける。現時点でこれだけ走れれば、再び「カズ、出てくれ」と起用されても応えられる気がする。


 1996年8月の日本-ウルグアイ戦、僕は右膝内側靱帯を痛めて右足で球を蹴れなかった。そこで左足と頭で2得点して5-3の勝利。右がダメなら左があるぞ、と。実際には左足だけじゃサッカーはできないんだけど、それくらいの気持ちでいこう。