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テニスのウィンブルドン選手権で2回戦に進んだクルム伊達公子さんの活躍を聞いた。テレビ観戦はできなかったけれど、パワーテニス全盛の時代に強打のビーナス・ウィリアムズ選手をあと一歩まで追い詰めたことに敬意を表したい。
サッカー界も一昔前と何が変わったかというと、速さや筋力などフィジカル面だ。4-4-2や4-3-3といったシステムが新しいと言う人もいるけれど、それよりずっと変化しているのは選手個人の肉体。陸上の100メートルで世界記録がどんどん塗り替えられているように、サッカー選手の身体能力も数十年前とは全然違って、それがサッカーそのものを変えている。
とはいえ、その中でも大事なのは技術だ。いくら体力があっても技術がなければ十分には生かせない。パワーで勝るウィンブルドン元王者に対してクルム伊達さんが互角に渡り合えたのも、確かな技術と経験があったからだろう。個人競技と団体競技の違いはあるけれど、僕もボールを止める、蹴るというしっかりした技術の土台がなければここまでやってこられなかった。
思うに、クルム伊達さんは1回戦で終わりという気持ちで大会に臨んでいるんじゃないかな。もちろん負けるという意味ではなく、目の前の試合に勝つために全力を尽くして、次のことは次に考えるという意味で。相手がアマチュアだろうがトップ選手だろうが関係なく、自分が100%を出せるかどうか。常にそんな意識でいるから大会でも力を出し尽くせて、いい勝負ができるんだろう。
僕も3月の慈善試合で、「カズ、44歳で出て大丈夫?」と言われたけれど全く気にならなかった。公式戦も紅白戦も常に全力だから、たとえ相手が日本代表でも、いつもと同じようにやればいいというメンタリティーが身についている。
最近よく年上の人から言われるのは「その年でそんなに動けるなんて、40歳の頃の私とは全然違うね」。そりゃ違いますよ、僕は6歳の頃から練習し続けているわけですから。40歳でトップアスリートのクルム伊達さんを見てもわかるように年齢は関係なく、50歳でも90分間プレーできるならやっていい。無理だと周りが思うのは、そんな人が今までいなかった、というだけなんだから。