BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2011年03月25日(金)掲載

“サッカー人として”
2011年03月25日(金)掲載

生きるための明るさを

 このたびの東日本大震災の被災者の方々に、心からお見舞いを申し上げます。被害に遭われた方々にとって、この2週間が、その一分一秒が、どんなものだったかを思うと、本当におかけする言葉も見つかりません。


 生きているとはどういうことなのだろう。サッカーをする意味とは何なのだろう。見つめ直さずにはいられない日々のなか、思わず頭をよぎったのは「今のオレ、価値がないよな」。試合がなくなり、見に来る観客がいなければ、僕の存在意義もない。プロにとってお客さんがいかに大切か、改めて学んでもいる。


 サッカーをやっている場合じゃないよなと思う。震災の悲惨な現実を前にすると、サッカーが「なくてもいいもの」にみえる。医者に食料、必要なものから優先順位を付けていけば、スポーツは一番に要らなくなりそうだ。でも、僕はサッカーが娯楽を超えた存在だと信じている。人間が成長する過程で、勉強と同じくらい大事なものが学べる、「あった方がいいもの」のはずだと。


 未曾有の悲劇からまだ日は浅く、被災された方々は余裕ある日々など送っていない。水も食べるものもなく、家が流され、大切な人を失った心の痛みはとても癒やされはしない。そうした人々にサッカーで勇気を与えられるとは思えない。むしろ逆だ。身を削って必死に生きる方々、命をかけて仕事にあたるみなさんから、僕らが勇気をもらっているのだから。


 サッカー人として何ができるだろう。サッカーを通じて人々を集め、協力の輪を広げ、「何か力になりたい」というみんなの祈りを支援金の形で届け、一日も早い復興の手助けをしたい。そこに3月29日のJリーグ選抜と日本代表との慈善試合の意義があると思う。


 こんなことを言える立場ではないけれども、いま大事なのは、これから生きていくことだ。悲しみに打ちのめされるたびに、乗り越えてきたのが僕たち人間の歴史のはずだ。とても明るく生きていける状況じゃない。でも、何か明るい材料がなければ生きてはいけない。暗さではなく明るさを。2011年3月29日のチャリティーマッチ、Jリーグ選抜の僕らはみなさんに負けぬよう、全力で、必死に、真剣にプレーすることを誓う。