©Hattrick
スペインでサッカーを見ることは美術館で絵を楽しむことに似ている。日本でのサッカー観戦はお弁当を手にしたピクニックの雰囲気。イタリアでは、スタジアムに入ると戦場に引きずり込まれた気分になる。そこではサッカーは戦闘だ。
そんな国でザッケローニ日本代表新監督は生きてきた。ACミランなどで働くともなれば、日々さらされる重圧は日本人が想像する比ではない。並大抵のことには屈しない人だろう。概してイタリア人監督は戦術も指導(私生活を含めて)も細かい。ザックにも潜んでいるそんなラテンの血を早く見てみたいね。
日本代表は海外組の選手をどう使っていくのが一番いいのか、考える時にさしかかっているだろう。無理に招集しなくていいのではと個人的には思っている。
人間は使えば「減っていく」ものだ。海外と日本の往復を4年も続ければ、身につくものもある一方、それだけ疲れ、削れ、壊れていく。今は大丈夫でも肝心な2年、3年後にはボロボロになりかねない。海外で認められようとしているとき、帰国して時間と労力を使い、クラブに戻れば体調は多少なりとも崩れている。クラブも「復帰後はまずベンチから」と考えがち。現地で活躍し、心身のコンディションを保つ大切さはもっと考慮されていい。
そんな海外挑戦組の一人、香川真司選手(ドルトムント)はパラグアイ戦のゴールで、どこか救われたところがあったんじゃないか。ワールドカップ(W杯)に帯同メンバーとしてかかわった1カ月は悔しく苦しかったはず。調子が上がっても目の前の試合には出られない。目標が遠い先にしかないことは選手にとってつらい。その状況で自分を見つめ直し、経験したことが大きな財産なんだ。
遠回りしたことで得るものがある。一足飛びで成功しないで良かった、と言える時もある。腐らず、未来をみつめる。今の僕もそんな気持ち。自分がこの先どうなれるのか、考えながらサッカーと向き合い続ける。「今さら何を」と言われるかもしれない。でもこれは自分との勝負だから。
それにしてもパラグアイ戦の香川はよかった。ボールの持ち出し方、DFとの間合いの取り方に表れる技術、そしてキレのあるドリブル。やっぱり代表の背番号11はああでないとね。