BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2010年08月27日(金)掲載

“サッカー人として”
2010年08月27日(金)掲載

異文化で成功する監督

 次の日本代表監督は誰になるのか。ブラジルでの2014年ワールドカップ(W杯)を目指している僕にとっては一大事だ。しっかりと選んでほしいね。


 欧州から監督を日本に連れてくるのは簡単じゃないし、時間もかかる。欧州は近くなったと日本人が思っていても、欧州の人々は日本を遠いものと感じている。商業的にも現代サッカーの中心は欧州で、そこで働く監督が外に出る積極的な理由がない。欧州を離れると自分の価値が落ちると考える監督もいるんだろう。


 かといって「ほかに働き口がないから日本に行きます」という人でも困る。そんな監督の力量などは知れたものだし、仕方なく引き受けた人間ほど、結果が出ないと「来たくなかった」と言い訳を始めるものだ。


 人が異文化へ出たときに失敗する理由の一つは、前の地での成功体験をそのまま持ち込むことだという。日本代表を率いる前にアフリカで監督をしたトルシエは「アフリカ人には規則を作りすぎてもうまくいかない」と言っていた。ときには外出を許し、ある程度自由を与えないとプレーの質まで落ちるらしい。アフリカにはアフリカに、日本には日本に合わせた指導があり、特性を見極めないとうまくはいかない。


 僕はトルシエに「お前は日本人と違う。外に出た人間で、出ることにも慣れている」と言われた。彼は外国に適応する苦労もメリットもよく知っていたんだろう。だから選手には外国へ出ることを勧めていた。


 監督がスペイン人になれば、スペイン代表やバルセロナのサッカーができると安直に考えるのは間違っている。日本には日本の実力があって、短期間で革命的に変えられる方法なんてない。あれば岡田(武史)監督だって、誰だってやっている。


 どうも日本は、ボードの上で戦術を語れる人が優れた戦術家だという見方が行き過ぎのような感じがする。モダンな戦術に最新理論――。でも、メッシ(アルゼンチン)のドリブルを前に多くの戦術が無力なのを目にすると、1対1の強力さの方が有用なんじゃないかと思えてくる。


 ブラジルではピッチの上での表現をもっと大事にする。ボールは人間より速く、人間はボールより速く走れない。このことも忘れて戦術が語られてはいないかな?