BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2010年05月14日(金)掲載

“サッカー人として”
2010年05月14日(金)掲載

人を選ぶのも一大事

 ワールドカップ(W杯)メンバー発表というものを僕はワクワクして迎えるんだ。「もしかしたら……」。毎回何かと話題に上り、周囲のみんながそんな気持ちにさせてくれるからね。


 選ばれた選手は誇りを胸に戦えばいい。そして世界のサッカーをエンジョイし、勝つために精いっぱいやればいい。簡単には言えないことだけど、人生をかけて臨むわけですから。


 人選をめぐっては様々な意見があるのだろう。でもそれは4年なら4年のスパンで、足りないところも足りるところも見極めて監督が決めたもの。「私ならこうする」との主張は自分が監督になってするべき話とも言えるし。選手にはいい時期も悪い時期もあり、より多くの選手を連れていきたくても23人に絞らねばならない。監督にとっては最も厳しく、つらい作業なのかもしれないね。


 ブラジルの代表選びではサントスが生んだ18歳ネイマールと20歳ガンソが話題を集めていた。ペレが2人を強く推薦していて、ネイマールは体が細いのに、全員を抜き去っていっちゃうFW。シュートも先輩のロビーニョが18歳だった時より上手いんじゃないかな。左利きのガンソは試合を作れるMFだけど、2人ともドゥンガ監督は選ばなかった。


 「今回の代表は関西から選びすぎ」。そんなことを言う日本人はいないけど、ブラジルでは「リオデジャネイロの選手が多すぎる」といった声は上がる。リオ州やサンパウロ州、それぞれに携わる人々が文句も付ける。協会会長が何州出身かで代表の色は変わるといわれ、政治的な要素も働くしね。


 二十数年前。サンパウロ州協会の会長室は「ゴッドファーザー」のワンシーンそのままだったよ。地方クラブの幹部が会長室の前で順番待ちの列をなしている。苦境を訴えてお金の相談をする。州の長は彼らを守るべく手を貸す。そんな人間関係から生まれる権力、争い。リベートなんて日本では禁句だよね? それも平気でやる。選手を売り買いすることで繁栄するんだというビジネス感覚が、日本と格段に違うから。


 もろもろの圧力がかかるブラジルでは大統領よりもサッカー代表監督の方が大変だと言われるんだ。「大統領は政策で失敗しても謝れば済むけど、監督はW杯で優勝できなかったら国に帰れない」とね。