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職人の世界ならばどこでもそうだと思うけど、技術とは見よう見まねで覚え、盗んでいくものだ。教えてもらうものじゃなく、吸収すべきものなんだよ。年長者が「後輩に何かを伝えたい」との思いを強くし始めたら、プロフェッショナルたる現役としては終わり。僕はそう考える。
川口能活選手がワールドカップ(W杯)南アフリカ大会日本代表で主将を任され、経験をメンバーに伝えてほしいと期待されている。本人も応えようとするだろう。でも彼は現役選手。日本代表が何たるかを実体験で知る人間が少ないから、彼に役割が回ってくるのだろうけど、難しい立場だよね。無理して気を使いすぎなくていいと思う。GKとしてゴールを守るチャンスがあるんだ。選手としてポジションをつかむため、ピッチのプレーで出し尽くせばいい。それがチームのためになるはずだから。周囲がその姿から「経験」を感じ取ればいいんだ。
「なぜ日本はセルビアなんかに勝てないの」。先日、夕食の席で聞かれた。ちょっと待ってほしい。セルビアは天才の宝庫だった旧ユーゴスラビアを受け継ぐ国。0-3の敗戦は欧州の人々にはサプライズにもならない。
メディアは日本サッカーの世界における位置をもっと正確に語るべきだ。歴史や実績に照らせば日本は1次リーグE組で一番下。世界の上位32カ国しか出場しないW杯では、常に下位集団にいるともいえる。この不都合な事実は国民に伝わらない。欧州では日本より格下を探す方が難しいよ。
なにも日本が勝てないというわけじゃない。十分勝てる。ただ、自分たちを客観的に見つめないと議論が見当違いになる。岡田武史監督を極端にバッシングしたり、不自然に持ち上げたり。W杯で日本がカメルーンに勝てば国際的には一大事で、僕らには偉大な一歩だということも忘れないでほしい。
「カズ、人生を楽しんでるか?」。一流選手たちは僕に必ずこう聞いてくるんだ。楽しみなくして良いプレーもない。代表も穏やかなスイスの風の下、感受性が欧州風になって悪いオーラも抜けるんじゃないのかな。そう感じるのは僕だけ? 戦いは厳しくても心は豊かに保ちたいね。
日本代表に期待してください。では次回はコパ・ド・ムンド(W杯)のあとで。