BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2010年04月02日(金)掲載

“サッカー人として”
2010年04月02日(金)掲載

今は振り返らない

 最近、日本サッカーの歩みを振り返ってほしいとの申し出をいくつか受けた。趣旨には賛同するのだけれど、今はこの手の話は控えたいなと思っている。


 Jリーグができて、ドーハがありジョホールバルがあり……。その歴史にどっぷりつかっているのが僕やゴンちゃん(中山雅史)だから、ぜひ当時を語ってほしいとなるんだろうね。でも今はシーズンが始まり、チームが昇格に専念し、僕も前へ進もうとしている時。後ろを振り返ってばかりでは後退しそうで、「昔は良かったね」と後ろ向きになるのも嫌。試合に出場することとのバランスをとっていきたいんだ。


 新しいものも10年たてば壁にぶつかると聞く。Jリーグも18年目、色々と行き詰まり、昔を掘り起こしたくなる時期なのかもね。かつて僕らが「プロなら用具係も設けてスタッフも増やしてほしい」と声を上げ、実現した環境整備はいまや当たり前のもの。すると逆に環境が良すぎて良くないと、若い世代の日本代表では洗濯や用具の手入れは自分でさせているのだとか。


 僕は1970~80年代の歌謡曲が好き。アレンジなしの懐メロなんて最高だ。でも、僕は「懐メロだけ」と見られたくはなくて、常に変化を感じ取り、必要ならば取り入れたい。古いメロディーを歌っていても新鮮味を感じさせる歌手のようにね。


 プレミアリーグ、スペイン、イタリアなど各国リーグの試合をチェックし、ブラジルの最新状況も追いかけている。サッカーは根本ではさほど変わらないものだけど、変化を読もうとする姿勢は失いたくない。


 1994年米国ワールドカップ(W杯)。1990年イタリア大会でゴール数が少なかったから、このホスト国は「ゴールを大きくしよう」と言い出した。1-0では盛り上がらない、大量点の方が面白い――。欧州の人々が「歴史をバカにするな」と言えば、「だから欧州は古いままで発展しない」と応じる。どちらがいいという話ではない。良い歴史を残しつつ、新しさを求める発想もあればいいね。


 これまで本当にいいサッカー人生を送ってきた。でもそれは昨日までの話。今日もすぐに過去となる。明日をどんな一日にして、どう自分を高めるか。僕はそれだけを考えていたい。