BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2009年08月07日(金)掲載

“サッカー人として”
2009年08月07日(金)掲載

執念は暑さにも勝る

 すっかり暑くなりましたね。18歳の時にブラジルのキンゼ・デ・ジャウーの一員として、2週間で日本の11都市を巡り国体選抜と試合を繰り広げたのも、こんな夏場だった。キックオフは真っ昼間、熊本のものすごく暑いこと! 開始15分で味方全員の足がパタリと止まったのを覚えている。そして攻められ続けるのだけれど、相手がドカーンと勝手に外し続けるものだから、負けない。そんなペースで計10勝1分だった。


 ヨーロッパの選手も日本の暑さと湿気に突然放り込まれたら動けない。1990年の夏、バルセロナが来日して日本リーグ選抜と戦った。「本当にバルサ?」というくらい動けない。これじゃバルサ同好会だ、と日本が圧倒するのだけれど、勝つのはバルサなんだ。決めるべきところを決め、こちらは決めるべきところを決められない。構図は今とあまり変わらなくて、終わってみると負けている悲しい現実があった。


 夏はコンディションに気を使うけれど、一番肝心なのはやはりメンタル。元日本代表監督のジーコが、酷暑の東南アジアでの戦いを前に「サウナに入ればいい(暑さはしのげる)」と語り、それだけでいいのかと議論を呼んだことがあったよね。ジーコは科学的対策よりまず、「アジアでは負けるものか」という自信を植え付けたかったのだと思う。


 トルシエも相通ずるところがあって、夏に長袖で暑苦しい格好でも何も言わず、冬に寒そうに厚着すると怒り出す。「気持ちで負けている」というわけだ。試合前にビタミン剤をとる選手にも、「それがないと駄目、という心が駄目」といい顔をしなかった。


 「スリが物を盗んでダッシュで逃げて、肉離れするか?」。サントスFC時代、きちんと準備運動する僕に監督のペペは笑いかけたものだった。当時から「今の選手はすぐブーブーと文句を……」とよく聞かされた。今では僕が「今の選手は……」と若い選手に言うわけで、こうやって受け継がれていくんだろう。


 暑いところでは暑いなり、臨機応変に戦えるのがサッカーにおける頭の良さ。勝負への執念は暑さをも超える。練習場でパスを何気なく失敗してしまうのは、試合を意識した危機感がまだ足りない表れ。僕も練習から勝負にこだわってやっていかないとね。