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ブラジルって豊かだなと思うときがある。15分でソバをかきこむこともなく、時間をたっぷり使える暮らし。田舎育ちで貧しい若手選手も、寮の肉料理でまずい部分は平気で捨てるぐらいで、食うのには困らない。食べるものがないなら余りが出る場所で「ください」と言えばいい、に近い発想。思い詰めて自殺、なんてことも少ないしね。
そんな感覚や文化はサッカーにも表れるから面白い。大事な場面でミスしても「まあ次があるさ」とネガティブにならないし、失敗すら忘れちゃう。好機で力まないのも、これと無関係ではないはず。
日本がワールドカップ(W杯)で優勝したとしよう。控えメンバーだと、祝福されても「出ていないし、貢献していないから」と答えそう。ブラジルなら出場機会がなかろうが自分が“23番目”だろうが、尋ねられる前に「オレ、優勝してきたぞ」と自慢話。
元ブラジル代表のFWレナトは、W杯でホテルへ戻るバスの中で「今日は勝ったからいいが、監督は大きなミスを犯している。おれを使わないことだ」と平気で言っちゃう。監督も乗るバスでそんなこと言う日本人はいないよね。横浜FCが1部昇格を達成した2006年、全員が昇格メンバーのはずでも「いやあ、僕は出場少ないし」と控えめな選手はいた。ちょっと謙虚すぎるのは日本人の性格なんだろう。
ほかにも興味深い違いがある。日本のメディアが18歳や20歳の選手のプレー、ミスをきっちり指摘するのを僕は目にしたことがない。関心は名のある選手へ向かい、その背後や細部でミスした選手は追及されない。ブラジルでは地元紙が、18歳でも何歳でも駄目だったらバシバシたたく。プロになった時点で批評される対象になるから、意識もするし、強くなっていく。
ブラジルでは「これで成功するしかない」との思いでサッカーをする。本当の意味で生活を賭ける。「稼いで両親を食わせる」という意識でプレーする18歳が日本に何人いるだろう。プロとはいっても、まだまだ日本はメンタル面で部活動の延長という考えを捨て切れていないと思う。趣味の域を抜けていないというか。趣味でお金をもらえれば、それはそれで豊かなんだけれどね。