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声で味方を助けることがサッカーでは大切だ。GKがDFに、DFがMFに、MFがFWにと、後ろから順にポジショニングを指示する。レベルが高いほどそうしたコミュニケーション能力が的確であるし、なおかつ言われなくても体が自然に動く。言葉のやりとりと体の動きのバランスが取れているチームは強い。
コミュニケーションは文化の違いが出るもので、例えばブラジルではいい意味でみんな自分勝手。発言をあまり重く受け止めもしない。言われたら「おまえがやれ」と言い返すし、試合後は言った本人も「俺、そんなこと言ったか?」と忘れる、ラテンのノリ。自分勝手に言い合えることがスポーツや人生でプラスに働く面がある文化なんだ。
ラテン系の国ではピッチで汚い言葉も飛ぶ。かつてJリーグで同僚だったブラジル人は「○○」という侮辱する言葉を日本語に直訳すると「△△」になると知るや、母国流に試合で相手を「△△!」とののしった。でも日本ではその言葉もやり取りにもなじみがないから、言われた当人は「カズさん、△△と言い続けるあのブラジル人は変なんですか」と笑っていた。
ブラジルでは攻撃的な言葉で言い合っても、互いに自分のいいほうにとらえる。日本人は同じ一言でもまじめに考えすぎ、本来のプレーができなくなりがち。言い方も大事なんだね。
チームのためには本音で言い合うべき時がある。でも本音は言いにくいものだし、サッカーは原因を一人のせいにできないから、とても難しい。今の横浜FCに必要なのは、勝ちたい気持ちをがむしゃらに出すことだろう。それこそ45分で倒れるくらいで。足がつっても、5人がベンチで控えている。全員足がつったなら、それはもうフィジカルコーチのせいにしよう。
12日(2009年4月12日)のファジアーノ岡山戦、出場選手も途中出場した僕も「走った」はずだった。でも遠征に同行しなかった選手に聞くと「闘ってない」「走ってない」と見えたという。外から感じられないということは、やはり僕らが足りないんだ。今は「俺はこう思うからこうする」より、もう全員でがむしゃらに気持ちを出すしかない。そうすれば伝わるものがあるはずだ。それが今、僕らがすべきコミュニケーションだと思うな。