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ワールドカップ(W杯)予選のカタール戦は素晴らしい試合だった。アウェーでカタールに勝つのはとても大変なことで、この結果は大きい。僕もフランスW杯予選で苦しんだけれど、予選序盤で失った勝ち点をあとで取り戻すのはものすごく難しいことだから。
予選はとにかく結果がすべて。辛口の評論家の人たちは勝っても試合内容に注文をつけるもので、いわばそれが仕事だ。代表チームの選手や監督は批判されるのも仕事のうち。そう思えば何の苦もない。世界中の代表チームがそうした重圧を受けて強くなる。僕もその重圧の中で戦いたいよ。
チームの大黒柱は結果が出なければたたかれる。それは期待の裏返しだから、いっそ“戦犯”扱いされる方がいい。それを発奮材料にすればいいし、負けてもスポーツ紙の1面になるのが超一流の選手。ただ、今の日本はその責任を背負う役目を監督が担っている気がする。選手にヒール(悪役)を引き受けるくらいの気持ちの余裕、ゆとりがあればいいプレーもできる。
ゆとりと油断は似ているけれど、その違いは意識が自分に向いているかどうかだ。相手が格下だから大丈夫とか、勝てるだろうと思うといけない。必要なのは、自分はこれだけ準備してきたという確固たる自信。一つのパスを失敗しても、最後まで100%を出して走りきるという気持ちがあればいい方に転がるはずだ。
サッカーの世界は恐ろしいもので、Jリーグ首位のチームが大学生とPK戦までもつれ込んだり、アジア王者がJ2相手に苦戦したりする。世界を見てもレアル・マドリードが3部のチームに負けたくらいで、相手がどこだから勝てるという保証はないんだ。
つまり相手によって自分の精神面のコントロールが変わってはいけない。チームメートのプレーも関係なく、何があっても同じ気持ちで自分の仕事をやり抜くんだという意識が必要だ。
フランスW杯予選では、6戦目にホームでアラブ首長国連邦(UAE)と引き分けたときにもうダメかと思ったけれど、次の試合でUAEが引き分けたことで僕らの自力突破の道が開けた。今回も残り5戦、どんなドラマが待っているかわからない。一喜一憂せず、同じスタンスで最後まで戦ってほしい。