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北京五輪に向けた大久保嘉人選手の五輪代表招集が、所属クラブのヴィッセル神戸との交渉の末に見送られた。これは前回、監督と選手の事情が違うと書いたのと同じで、五輪代表とクラブの事情が違うということだろう。
神戸の関係者はリーグ戦の成績に生活が懸かっている。今は順位も16位だし大久保選手はチームに欠かせない戦力で、五輪に出場すれば最大4試合を欠場することになる。どうぞどうぞ、と言われるのも選手としては寂しい話だろう。サッカー界全体の盛り上がりを考えれば神戸にとっても悪い話ではないと思うけれど。
ただ、出せないというクラブの判断とは別に、選手自身が五輪に出たいならクラブにはっきりと意思表示すべきだ。プロとして国際舞台で活躍して自分の価値を上げたいという思いはあるはずで、チャンスはめったにない。話し合った結果どうなるかはともかく、代表でプレーしたい、世界にアピールしたいという思いを伝える権利はあるはず。
最近では浦和レッズの坪井慶介選手やガンバ大阪の加地亮選手のように、日本代表からの引退を表明するケースもある。それぞれに事情があるんだろうけど、理解できるのは代表で控えの立場になったときの難しさだ。
長期の遠征などでは3、4週間を代表チームで過ごすことがある。そこで出場機会がないとゲーム勘が鈍るし、実戦でしか養えないゲーム体力も衰える。練習試合をたくさんこなしても、コンディションを維持するのは難しいものだ。
そんな状態でもクラブに戻ればチームの中心として期待されるわけで、すぐに結果が求められる。クラブでも代表でも両方うまくいかなくなる不安を抱える中で、代表に区切りをつけようと思ったんだろう。
中澤佑二選手(横浜F・マリノス)も一度は代表引退を決めたけれど、すぐに戻って主力として頑張っている。坪井選手も加地選手も28歳。僕から見ればまだ子供みたいなもの。僕の年まであと13年もプレーできていいな、と思うくらいだ。
現役を引退するわけじゃないし、これからクラブでいいパフォーマンスを見せていれば、また代表で必要とされるときが来るはず。だから僕は代表引退と聞いても信じないことにしている。いずれまた復活した姿が見られると思うからね。