©Hattrick
15分ほどではあったけれども、4カ月近く離れていた試合のピッチに、9月4日の一戦で戻ることができた。
いつもなら、ケガをしたら「どこまでには復帰する」とゴールを決め、ひた走った気がする。今回は「いつまでに」とは定めず、早く戻ることよりも時間をかけることにした。負荷を50%から60%、80%へとテンポ良く戻していたところを、50%の次の日も50%で大丈夫かなと、慎重に慎重を重ねていく。ドクターのゴーサインが出ても、もう数日我慢するくらいにね。
体の検査を惜しまず細かく状態を把握するうえで、鈴鹿と横浜の両方の病院にお世話になった。トレーナー陣もそう。監督は「焦らなくていい」と理解してくれて、合流当初は練習での負担を配慮してくれた。練習相手になってくれた、同じくリハビリの途上にいる選手たち。みんなに助けられてここまでたどり着けた。
自分の体でさえ未知のことは多い。万事、僕らは知らないことだらけで、現役が長かろうと特定分野のプロであろうとそれは同じ。だから人を頼り、相談し、助言を聞き入れる。リハビリの道筋にも様々な人の助言が反映されている。独りでない僕は救われている。
55歳という現実がある。ケガをしたら戻ってこれるのか、不安視した方々もいたと思う。「調子が良くなればなるほど、壊れるリスクも高まります」。警告めいたこともトレーナーから言われてきた。避けては通れぬ不安との並走。でも、慎重に事に当たることと、怖がって踏み出さないことは、似ているようでも違う。
交代出場したのは2-0でリードした残り15分間ほど。あの状況でFWが果たすべき役割がある。ハーフライン付近で相手スローインだとしたら、どこに立つか。大概のFWは点を取りたいから、前寄り、相手DFに近い場所にいたがる。そうでなく、少し下がり、スローインする相手のライン上に立つのが望ましい。それが相手MFをけん制することにつながり、その選手から展開される事態やピンチを防ぐ。チームが助かる。
距離にしてほんの数メートル。目を凝らさねば見落としてしまいそうなディテールへの理解から、FWの、選手の仕事は成り立っている。動ける、走れる、だけでは足りないんだ。
ああ、自分はサッカーをしている。体で分かっている。それを味わえた15分間を思い返したとき、あの時間を90分間へ永らえさせたいと願う。サッカーをしている実感をもっとかみしめたいと、思いを定める。