BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2020年08月28日(金)掲載

“サッカー人として”
2020年08月28日(金)掲載

道を開いてくれたウッチー

 ウッチーこと内田篤人さんは、20歳以上も年の離れた僕にもなついてくれる「かわいいひと」でね。周りにとても気遣いができる。夕食会でも、ハセ(長谷部誠さん)ならここまで言ってもOK、マヤ(吉田麻也さん)にはこのトーンで、という風にそれぞれの個性まで踏まえて発言するところがある。イジリ方も一人ひとり、変えるというか。


 ときに辛口、ひねりを加えた物言いをするのだけど、それも憎めない。むしろしゃれの利いた、ほほ笑ましいものに聞こえる。そんな頭の良い感じが、プレーにも出ていたよね。クレバーで、非常にモダンなサイドバックとして、欧州へ至る道を切り開いてくれた。


 50歳だからよくやった、32歳じゃまだ早い――。そういう問題じゃないんだ。選手として過ごした時間が長いか、短いかは、本人だけが知り得ること。ウッチーだけが分かる時間の重み、15年間に及ぶ濃い日々を過ごしてきたことだろう。


 「別の競技みたいに感じます」。欧州と日本のサッカーについて、そんな言い方をしていた。それはレベルや技術の差だけでなく、ピッチの背後にある考え方の違いでもあるだろう。「正々堂々」は大事だけど、武器を構えた相手へ真正直に手ぶらで立ち向かうような戦い方が賢明かな? 生活が左右されるとなれば、誰でも必死に“ずる賢く”もなるよ。サッカーへのアプローチも含めた違いだろうね。


 レベルの低い試合をみていると「サッカーって難しいよな」と思う。けれども欧州の超一流に目を転じると「サッカーは簡単なんじゃないか」と思えてくる。そう錯覚してしまう。思い描く通りにパスが出て、簡単にボールは止まり、ドリブルが進む。ああやればいいんだと納得してやってみると、簡単にみえることほど難しい。五木ひろしさんの歌を聴く限りだと同じように歌えそうでも、歌えない。試してみてください。


 引退会見で語っていた通り、これからの日本選手は欧州へ「勉強しにいくのでなく、勝負しにいくべし」なのかもね。旅立つ者たちは自分自身で様々なことを感じながら、解決していくしかない。先駆者がしてきたことは役に立つ。それでも、自分の道は自分で切り開く。みんなそうしてきた。後に続く人たちは、先人の残してくれた道をさらに大きくしてほしい。そうすることで、先人の成し遂げたこともより輝くわけだから。