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横浜FCは自分たちでボールを持ちながらしかけていく主体的なサッカーにトライしている。攻撃には躍動感があるし、チャンスもつくれている。再開後の6戦で「何もできなかった」という試合は1つもない。
今季は降格がないことで、戦い方やチームの作り方は例年とは違ってくる。新しいシステム、スタイルへのトライ。世の中を見渡しても、ウイルス感染症が人々の生活を変えている今の状況は、何かにトライする1つの機会でもあると思う。
トライは発見も連れてくるよね。選手会の職員はこれまで数カ月もかけて全国56クラブの意見を尋ねて回っていたのに、オンラインだと何分の一の時間で済んでしまう。移動に費やしていたおカネと時間はどこへやら。僕でいうと、最近はピラティスを試している。もともと体が硬いから、筋肉や関節の可動域を広げて体全体を動かしやすくなればと。発見は? まず何より、指導する女性がきれいで……。
選手のキャリアにおける移籍の数々もチャレンジといえるだろう。イタリアへ、クロアチアへ、若くしてブラジルに渡ったのも、横浜FCに身を置いたのも、すべてがトライ。新しい選手や指導者と出会い、新しい街、文化や考え方に触れる。トライのたびに活力を得て、心がリフレッシュするのは楽しみでもあった。「寅さん」のように土地ごとのマドンナさんとも出会えるしね。
ただし、趣味ではなくプロとしてトライするのであれば、結果を考えねばならない。状況が許すうちは、トライの方針転換が迫られそうな事態でも「いまは我慢のとき」と構えていられる。怖いのは、いいトライをして好内容を続けていても、勝てないままだと「いいこと」だったものが悪いものへと転じかねないことなんだ。「必ず良くなる」と信じて向き合っていたはずが、「本当にこれでいいのか」と分からなくなっていく。していることは同じ「いいトライ」のはずなのに。
それはJ2から昇格したチームがいつもぶつかる壁、あるいは挑戦する者が必然的に直面するもの。「J1で勝つ」ことの言葉以上の厳しさを、僕らはこの6試合で知らされてもいる。
だからいまは、結果がほしい。このトライが価値あるものだと、そして自分たちがJ1に値するチームだと確かめるためにも。